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新年度相場入り

松下 律

2021/04/02 08:20

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ショック待望?

 今週は、日経平均が配当落ち分を即日埋めたこと、円ドルレートが110円を突破したこと、が印象的でした。3月末はアノマリー通り7か月連続で月末安でしが、翌日には値を戻しました。


 予想より好調だった日銀短観も出ました。(エイプリルフールでなく。)中国のPMIは少し予想を下回りました。米国のISM製造業景況指数は予想を上回る数字でした。


 超金融緩和下の業績回復を買う、ということでバブル化進行という相場認識を変えることはないのでしょう。強調相場は継続、と言えるのでしょうが、さすがに1年を超す上昇が続いて来たということで、反落を懸念するあるいはもっと積極的に、反落を期待する、といった向きも増えているのでしょう。


 このところプチ・ショックといった感じの材料が多発しているように見えます。ただしいずれもあまり大きな影響を株式相場に与えなかったようです。強いて言うなら、日銀ETFショックで日経平均は1800円くらい下落したな、くらいでしょうか。


・半導体ショック(ルネサス・テキサス・ショック)

・米金利上昇ショック

・日銀ETFショック

・スエズ運河ショック

・アルケゴス・ショック

・ミャンマー・香港・ウィグル・ショック(中国との摩擦激化懸念)

・バイデン増税構想ショック


 相場変動から利益を汲み上げる、という投機方針の市場参加者からしますと、1年も上昇相場が続いた後ですし、そろそろどこかでショック安でも到来してくれないものか、と思っても不思議ないと思いますが、これらのショックでは小粒すぎたのかもしれません。ただ、株式相場のショック耐性を慎重に見極めようとしている人たちがいるに違いない、ということは意識しておいていいような気はします。


 過去5年くらいを振り返りましても、チャイナ・ショック(中国景気懸念)、ブレグジット・ショック、リスクパリティー・ショック、クリスマス・ショック(米中対立)、コロナ・ショック、等々、いくつものショック安相場がありました。ショックはショックでそれぞれに異なるのですが、いずれも「株式相場がある程度の期間上昇した後にショック安が起きた」という点は共通しています。


 現在の強調相場は、コロナ対策の超金融緩和を背景にしていますから、上記のショック前の上昇相場より規模が大きく、ちょっとやそっとでは壊れない頑丈なものでしょうが、ある程度の期間の上昇相場の後に急落局面があることは珍しいことではありません。


ちょっとくどいのですが・・

 先日ある新聞で、「日銀のETF買いは資本市場に対する敬意の欠如」と主張する記事を見つけて驚きました。それも米国と比較すると鮮明だ(米国では長期金利も株価も市場が決めるものという姿勢が揺らいでいないのに・・)と言うのです。


 先週の放送で日銀のETF購入が4月からトピックス型のみになることについて、日経平均の価格形成のゆがみが助長されにくくなる方向であり、評価する市場参加者が多いだろうという話をしたのですが、この記事を読んでもう少し説明を加えたくなりました。


 日銀が日経平均型のETFを購入する必要を強く感じたのは、日本の株価が日経225先物市場における売り仕掛けによって売り崩されているのではないか、という危機感からだったのではないか、と私は感じます。(もちろん、前提として日本株の需給が悪いという事情があったわけですが。)


 企業業績が悪くて株式需給も悪い、となれば株式相場が下がるのは致し方ないことですが、だから市場平均のPBRが1倍まで下がるのか、0.5倍まで下がるのか、は個々の市場参加者には決められません。売り買い全体の需給によって決まるしかありません。


 そうした時に、日経225先物の売り(仮需)を使って相場が売り崩されれば、本来のファンダメンタルズと需給からすれば、例えば平均PBR1倍辺りで下げ止まるはずの相場であった、としても、さらに下落する恐れがあるかもしれません。


  落ちるナイフは掴むな、の例えではありませんが、売りが圧倒的に優勢な時に、ファンダメンタルズから見れば割安、として買い向かう市場参加者は少ないものです。(たいてい様子見してしまいます。)売り方は、資金量に自信があれば嵩に掛かって売り崩しに来ます。そうした時に買い向かえるのはある種の「公的資金」しかないということは、わが国の株式市場で昔から何回も経験して来たことです。


 日銀は、どうしようもない需給の失調に対抗するためにETFを買った。その際、売り方が売り崩しに使う日経225(先物)に目を着けた。そして、一定の成果をあげたので、日経225型のETFを買うのをやめることにした・・


 日銀は、資本市場に対する敬意を持っていなかったのではなく、(良い悪いは別にして)現実にある不都合に対処するために、(日経225型のETF買いという一見異例に見える)金融政策を実行したのだ、と私には思えます。


 中央銀行の役割は国によって違います。例えば、米国の中央銀行は失業率を低くすること(最大雇用の実現)を金融政策の目的のひとつとしているとされていますが、日銀はそうではないでしょう。日銀法によれば、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とあります。(デフレととともに)株価の行き過ぎた下落により国民経済の健全な発展が阻害されるかもしれない、となった時に日銀がETFを買うのは日銀の理念に適うことだったと思いますが、どうでしょうか。(私には、ETF買いを決めた時の日銀総裁が、リフレ政策に慎重だったとされる白川氏だったことがとても興味深く感じられます。総裁が誰であれ、日銀は適切な行動をしたのでしょう。その意味で、どう評価されるにしても、白川氏は日本のセントラル・バンカーだった、ということなのでしょう。)


2021年4月2日

証券アナリスト

松下律