Logo stockvoice

ブログ:Onevoice

FRB、タカ化か・・

松下 律

2021/06/18 08:20

D5718516 997a 49b1 b8ed 3b901c12c91b castphoto15 matsushita

ワクチンラリー不発、今のところ・・

 明確に29000円を超えられなかった日経平均が今週火曜日ようやく29500円近くにまで上昇して、いよいよワクチンラリーか、と思わせたのですが、FOMCがもたらしたサプライズでとん挫という格好です。


 日経平均は、今年5月13日(14日のオプションSQの前日)に直近安値27385円を付けた後、今週火曜日6月15日には高値29480円を付けており、その間7.7%上昇していますから、そこそこに上昇した、と見ることもできます。


 しかし、今年の高値は2月16日の30714円ですから、今の水準はそれには遠く及ばず、米国ではSP500やナスダック指数が史上最高値をクリアしている、とかドイツDAX指数も同様、などと比較しますと(買い方にとっては)何とも残念な動きではあります。


 ワクチン接種の浸透とともに景気の先行き見通しが明るくなってその結果株価が上昇、という分かりやすい相場展開は日本については見込み薄なのかどうか、よく分からないところですが、またどこかで(1日で1000円とか3日で2000円といった)急落局面を期待している、という向き以外にとってはイライラの続く相場付きのようです。


 見て来たような言い方をするとすれば、オリンピック前くらいまでにサマーラリー(ワクチンラリー)があって、例えば日経平均でワンタッチ3万円を示現して、その後10%未満の反落を見て晩秋~年末相場で今度は本格的な3万円超えの上昇を見る、といったことになるのであれば、目先の多少の波乱は気にならない、ということかもしれませんが、さてそうなるかどうか・・・


 やはり気になるのは史上最高値圏にある米国株なのでしょう。昨日のFOMCの結果を見て大幅に反落して、しばらく低迷ということにでもなれば、それはそれで、金融相場から業績相場へいよいよ本格変貌、などという見方もできそうな気がして来るのですが、それほどの劇的な反応が起きたわけでもなく、どうも多くの市場参加者は様子見になっているような気がします。


 金利の引き上げが見えて来たのは米国経済正常化の証し、一方でインフレ率の上昇はコロナ禍のもたらした一時的な現象、供給サイドの体制が整えばまたゴルディロックス状態に復帰、というのが現時点の一番の楽観的見方、なのだろうという気がします。


 悲観的な想定をしてみるとしますと、資源高による市場価格の混乱、中国経済の変調、地政学リスク、米中摩擦の激化、インフレ⇒米金利の急騰、といったリスクの顕在化によって株価が10%を超える規模の下落局面もあるかもしれない、といったことも考えられるでしょう。


 どちらにせよ、どこかで(あるいは今かもしれません)何らかのポジションに賭ける価値が出て来るかもしれませんので、予断を持つことなく相場を見て行くのがよさそうではあります。


高圧経済と金融抑圧

 現在米国(初め世界中でそうですが)では「高圧経済」が実践されている、とよく言われます。


 財政・金融総動員でとにかく需要を喚起する政策で経済に圧力を掛けて、景気を浮揚し雇用を回復するというわけです。需要の増加に供給が追い付かないとインフレ圧力が強まることになりますが、まずは景気の浮揚と雇用の回復が先、というわけで多少のインフレには目をつむろう、としていると見られてもいます。


 よく知られているように、米国の中央銀行は日銀などとは違って「雇用の最大化」がその役割として定められているので、雇用の回復は大きな目標となる、と言うのです。


 高圧経済と言いますとおどろおどろしいですが、ケインズ政策とか不況対策とか、まあそんな部類の政策と同じという気もします。


 ただ、高圧経済によって雇用の回復を図っても、その歪みは大きく、結局雇用を安定的に守ることはできない、といった反対意見も数多くあるようです。


 今米国経済は、想定上のインフレ率の上昇を受けて微妙なところにいるようです。同じようなことは中国経済でも起きているようで、中国ではいかにもそれ流で資源価格を権力で押さえつけようといったことも行われているようです。


 高圧経済と一対というわけではないのでしょうが、「金融抑圧」という政策もあるとのことです。


 金融抑圧とは、「簡単にいうと、市場実勢に比べて著しく低い水準に金利を規制する政策のことである。 金融抑圧という用語は、元々はマッキノンやショーといった国際経済学者によって使われ始めたもので、(1980年代に始まる金融自由化以前の)新興国の金融システムのあり方を特徴付けるためのものであった」のだそうです。


 高度成長期のわが国では政策金利が意図的に低く抑えられていた、とよく言われますが、成長のために設備投資を活発にするために、植菌して設備投資するのが有利という状態を創り出すために低金利政策が実行されていたということでしょう。金融抑圧の一種であったと言うことができるでしょう。


 コロナ禍に対応するために世界中で超金融緩和と巨額の財政支出が実行されたわけ(まさに高圧経済)ですが、その結果として各国政府は巨額の負債を抱えることとなり、中央銀行は資産の肥大化を受け入れています。金利はどこの国でもほとんど消滅しました。金利がゼロになる前にインフレ率も急激に低下しましたから、実質金利が大幅に下がるというようなことは起きていませんでした。


 さて、ということで、そういう状態が永久に続くことはなかろう、と、まさにそのとおりで、コロナの悪影響が後退するに連れてインフレ率は徐々に上がりつつあります。カネ余りで投機資金が資源市場に流入といったこともあって、卸売物価が急騰する、といったことも起きて来ました。


 時間が経てば物価は安定するでしょうが、経済が回復するとすればインフレ率はある程度の水準に高まるはずです。そういう状態で、膨らんだ政府負債を順調に返済できるのかどうか?


 例えば米国、政府はこれからも膨大な支出を続けるようです。そうした財政支出をファイナンスできるのかどうか?政府支出の増加が招来インフレと高金利を引き起こすことにならないだろうか?そうなれば、どこかで株価の急落といった状況が到来するかもしれません。


 そうしたことを考える時、もし米国が金融抑圧に成功するなら、実質的に政府の債務を順調に減らして行くことができるのかもしれません。高圧経済と金融抑圧の両方で見事に成果を挙げる、という偉業を、米国経済は達成するのかもしれませんし、大きな代償を払うことになるのかもしれません。


2021年6月18日

証券アナリスト

松下律