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ボラティリティ上昇

松下 律

2019/05/17 09:05

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当面の底打ちか

 日経平均2万1千円を割り込むとすかさず買いが入って来る、という市場参加者の動きが優勢となって、まずは当面の底打ちとなった、という相場推移のようです。


 日米ともに企業業績の発表が峠を越しました。結果に対する市場参加者の「肌感覚」は「さほど悪くない、まずまず」といったところで、先行き見通しを含めて、ここからさらに売る、ということにはならない(今のところなっていない)ようです。


 今年の高値からの下落率で見ますと、日経平均も、DJIAもナスダック指数も同じようなものですが、印象としては日本株の方が下げたように感じます。


 日本株は相変わらず需給の悪さが目立つ気がするのですが、大幅な自社株買いを発表して株価が上昇したディーエヌエーのような動きは注目だと思っています。需給の改善を「買う側」に期待することが難しいとすれば、企業がもっと積極的に自社株買い(株主還元)をするしかない、ということなのでしょう。


 当面の注目材料(懸念)はやはり「米中対立」と「地政学リスク」に絞られて来たようです。米中対立は、関税だけでなく、ファーウェイ排除(昨年のZTE排除と同じですが)といった、ちょっとどうなのだろう?というところまで来ていて、これからさらに激しくなるでしょうし(つまりは日本もとばっちりを受ける)、地政学リスクはひょっとすると格好の売り材料として「売り屋」を喜ばせるようになる恐れがあります。


 当面の底は打ったし、テクニカル指標面からは底値からの離脱がうかがわれるので、相場は上向きと見ていいのでしょうが、いろいろな材料でボラティリティの高い展開となるのではないか、といった感じで見ておくところなのでしょう。


市場参加者の前提と織り込み度合い

 ボラティリティ、と書いたのですが、示すところはもちろん「相場の変動度」なわけですが、厄介なのは、単に相場の変動度ではなく、それをネタに投機的な資金が大量に動いて結果として(一時的であるにしても)相場を動かす(ほとんどの場合大きく下落させる)ということが現に起きて来たし、これからも起きるだろう、というところです。


 投機的な資金によって下落する相場はそれほど長続きするわけではないのですが、ある程度以上株価が下げれば投機的な資金でなくても「ポジションの縮小」や「投げ」が出ざるを得ず、そこを「買い戻す」という形で「投機筋=多くの場合売り屋」に成功をもたらしてしまいます。


 昔であれば、投機の主流は「買い煽りでバブル的な高値を作る」というものだったのですが、今もそれは個別銘柄で時折あるものの、主流は「相場全体を売り崩す」というものになってしまった、というのが私の認識です。(もちろん昔も相場の大暴落はあったのですが、それはどちらかと言うと「自然発生的」なものだったと思います。それが今はかなり「人工的」なように見えます。)


 以前なら、相場の現状把握は、「現実に起きそうなこと」と「その起きそうなことに対する織り込み度合い」の関係を考える、といったこと(「予想」とその「織り込み」)だったわけで、もちろん今もそれは重要なことだと思うのですが、それ以上に今は、投機的な資金がそういう織り込み度合いをどの程度織り込んだポジションに今なっているか、とか、どういう方向に投機資金が動きそうか、といったことを考える方が重要になっているように感じます。


 今時点で考えますと、おおむね以下のようになっているようです。


・今後の見通しとしては、1.「ゴルディロックス相場が続くか?」あるいは、「世界的な景気後退を織り込む相場となるか?」という点を想定しておくべきでしょう。→私の感じでは、世界的な景気後退を織り込む相場になるのはまだ先では?


・織り込みの度合いがどうも日本と米国、あるいは日本以外の市場参加者で違っているようだ、という点に注目しておくべきでは、と思えます。


 データを「ソフトデータ」と「ハードデータ」に分けて、さらに日米の市場参加者を想定して、それぞれの「織り込み度合い」を1から10までの10段階で推し量ってみます。(1が一番織り込み度合いが低く、10が一番織り込み度合いが高い、とします。)


日本

・ソフトデータ 7〜8

・ハードデータ 6〜7


米国

・ソフトデータ 2〜3

・ハードデータ 3〜4


 日本の場合、ソフトデータ(センチメント)、ハードデータ(経済統計数字)ともに、「かなり悪くなっている」という織り込み度合いになっているのではないでしょうか。(その証拠に、平均PERが12倍割れまで株価が下落してしまっています。需給要因が強いとはいえ。)


 米国の場合は、ハードデータは少し悪化しているな、という認識ながら、(雇用関係のハードデータが強いから、というせいもあるのでしょうが)ソフトデータ面ではまだまだかなり楽観的なようです。貿易摩擦に対する見方も楽観的でしょう。


 こうした状況で、ハードデータがさらに悪化する、とか、地政学リスクが再浮上する、とか、投資家心理面を脅かすような出来事が起きたらどうなるのだろうか?そんなことを思います。


 センチメントが悪化した場合、ハードデータではもう(そこそこ)悪くなっているわけですから、株価が一段安、ということもあるかもしれません。


 ここから数か月は、そういうことを想定した上で相場に対処するところなのだろうな、と思ったりします。


(追加)令和の強気相場

 向こう数か月はそんな感じとして、少し長期に見て、令和の時代の日本経済と日本株についてみますと、けっこう強気になれるように思えます。


 自社株買いをとってみましても、実施するのが当たり前になって来たのに加えて、規模の拡大が見られるようになっています。(今週のディーエヌエー株が典型例でしょう。)


 さらに、ROEも一時的に高くなるということではなく、水準そのものが徐々に高くなっているように見えます。


 グローバルの環境を見ましても、過去30年ほどで以下のような流れがあったように思います。


・ジャパン・アズ・ナンバーワン⇒ジャパン・バッシング⇒ジャパン・パッシング(to China)⇒ジャパン・ナッシング⇒日はまた昇る・・


 いろいろな分野で日本企業は競争に負けましたが、しぶとく勝利して強固なビジネスモデルを確立した企業も多い、という点も株式市場においては評価すべき点でしょう。


 それからさらには、なかなか説明が難しいのですが、「日本的資本主義」が徐々に浸透しつつあるように思われる、というのが強気の根拠の根っ子のところにできつつある、という感じを持ちます。


2019年5月17日

証券アナリスト

松下律

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