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DJIA、史上最高値

松下 律

2019/07/05 08:25

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それにひきかえ

 海外勢の売り越し額は減りつつあるとは言え、日本株はとにかく需給が悪いので、米国株のようには上昇しない局面が続いています。


 この一週間も引き続き「トランプ・プット」と「パウエル・プット」を意識する展開でした。


・G20での米中首脳会談→概ね予想の範囲内ながら市場に安心感

・ファーウェイへの制裁緩和→これは若干ポジティブ・サプライズ

・突然の米朝首脳ミーティング→これは大きなサプライズだったでしょうが、株式市場にはほぼ無関係


 ここまでは、「トランプ・プット(米中摩擦のコントロール)」で、日本株にとっても上昇要因となったと思われます。


 ここからが、「パウエル・プット(米景気対策のための金融緩和)」で、


・6月PMI、ISM製造業景況指数はさほど悪くなかった、ものの、

・ISM非製造業景況指数、ADP雇用統計の数字が悪かった、ということで、


 →金融緩和観測→米国株上昇、ただし、米金利低下→円高→日本株安、の連鎖で、日本株にとっては逆風の混じった追い風、といったところです。


 いくら予防的政策と言っても、株価が史上最高値にある局面で、歴史的に見てさほど高くもない金利を引き下げようと言うのですから、米国株は多分「バブルへGO!」で、悪材料は無視、好材料はすかさず評価、となり始めているのでしょう。


 日本株はとてもバブルへGO!どころではなく、海外勢の売りを吸収し続けている状況、ということのようです。


 引き続き、グローバル景気と企業業績(そろそろ第一四半期決算の発表時期になります。)を見ながら、ソロソロと進むのでしょう。(下値は限定的という感じはしますが、上値も当面は限られるのかな、と。)


投資の基礎力の例

 先週は典型的な「投機」の例としての「トレーディング」について書きました。


 今回は、典型的な「投資」である「資産形成のための株式(関連商品)の積み立て」について書きます。


 結論から先に書いてしまいます。


1.iDeCo、つみたてNISAの仕組を使って20年〜30年スパンで積み立て投資を実行することが、実用という観点からして、もっとも効率的な資産形成のための投資。


2.毎月2〜3万円の積み立てで数千万円の資産形成を期待できる。(2万円を毎月30年間積み立てると総額で720万円になりますが、投資によって数倍になることを期待できる。


 投資対象としては、市場並みのパフォーマンスを目指す形のETF、あるいは投資信託で十分。もっとも望ましいのは、能力あるファンドマネジャーが長期スパンで運用するアクティブ型の投資信託であるが、パッシブ型でも十分。


4.どんな投資信託を選ぶべきか?については放送の中で少しコメントを加えます。目論見書のどの辺りに注目すべきか?といった点です。(運用の基本方針、成長株投資、投資対象の規模、過去の実績、等々。)


投資対象は?

 投資信託を積み立て投資するわけですから、投資対象について直接的に検討することはないのですが、理解のために典型的な投資対象(株式)を考えてみます。


 ある会社(X社)の株式(X株式)を想定します。X株式の概要は以下のとおりです。


・株価=1,000円

・一株当たり利益=80円

・一株当たり配当金=80円(つまり、配当性向が100%ということです。)

・一株当たり純資産=1,000円


したがいまして、


・PER=12.5倍

・PBR=1倍

・ROE=8%

・配当利回り=8%


 何となく非現実的な例に見えるかもしれませんが、今の日本株市場で、大手商社やメガバンクが配当性向を100%にすると、だいたいこんな感じの株式になります。


 このX株式について、以下のように仮定します。


・この会社は今後30年間、まったく成長も衰退もせず、現在と同じ業容・利益であり続ける。


 このように仮定しますと、このX株式は30年後、以下のようになります。


・株価=1,000円

・一株当たり利益=80円

・一株当たり配当金=80円(つまり、配当性向が100%ということです。)

・一株当たり純資産=1,000円


 したがいまして、・・要するに30年前と同じです。


 さて、この株式1株に今投資した(投資元本1,000円)として、30年後に投資資金はどれくらい増えているでしょうか?(計算を簡単にするために税金は考えないことにします。)


1.毎年受け取る配当金を、金利ゼロの預金として貯めて行った場合:

・投資元本=1,000円(今と変わりません。)

・配当収益=80円×30年分=2,400円

・合計=3,400円


 最終的に投資元本1,000円は3,400円、3.4倍になる計算です。


2.毎年受け取る配当金を、「このX株式に再投資」して行った場合:

・投資額=1,000×(1.08)^30=10,062円


 30年間で投資元本1,000円の10倍になる計算です。


 受け取る配当金を複利で増やすことができる結果、これほど大きな額になるのです。


 配当金を再投資できると、長い年数で大きな成果を生み出す、という結果です。


30年の積み立て投資

 30年積み立てるとして、最初の年の1,000円は、30年後に10,062円になり、10倍ですが、2年目以降は運用年数が1年ずつ減って行きますので、だんだん倍数が減って行きます。


 これを考慮すると、30年間の積み立てで、積立総額のだいたい4倍弱にはなる、と想定していいと思います。(正確な計算はご興味あればしてみてください。)


 つまり、毎月2万円ずつ総額720万円積み立てれば、30年後には資産がだいたい3,000万弱くらいになると期待していい、ということになります。


 こうした例で、世間でよく言われるのは「複利の効果」です。


 しかし、投資の観点からしますと、もっと重要な点があります。


 それは、上記の例で明らかですが、この投資対象であるX社が、


・「30年に亘って、ずっとROE8%を達成できる」と仮定したところです。


 30年間に亘ってROE8%できる会社の株式に長期投資すると、その会社が「例え、まったく成長しない会社であっても」投資資金を10倍にすることができる、という点です。


 ある程度以上の水準のROEを達成し続けることが投資の観点からいかに重要か、ということなのです。


 この会社が本当にそれを達成できる、と信じていいか?


 投資の観点からは、これが重要なのです。(実際には、ファンドマネジャーが投資家の代わりにやってくれます、と言うか、ファンドマネジャーに任せることになります。)


 さらに、


・長期にわたって、株式で複利運用できる無税のスキームを使えるかどうか?


ということが決定的に重要です。(これは、iDeCoで可能です。)


上場会社のノルマ

 ROE8%、という数字は、2014年のいわゆる伊藤レポートの中で「上場会社のノルマ」として示された水準です。


 この示すところは、30年で10倍という規模感が退職後の生活のための資産形成という観点から合格点、ということだろう、と思います。(つまりは、まさに上場株式に対する「期待(要求)収益率=8%以上」、ということです。)


 日本の株式市場のバリュエーションが「まとも」で、日本の上場会社が平均的にROE8%以上を達成し続けることができれば、今現在から資産形成のために積み立て投資をすることは有力な選択肢になります。(非課税、所得控除の仕組みを使う前提で。)


 逆に、株価のバリュエーションがめちゃくちゃで、日本の上場企業がROEを無視するような経営をするなら、資産形成のための長期の積み立て投資などは愚行中の愚行です。

 

 実際、平成の30年間は結果的にそうでした。スタート時の市場バリュエーションはめちゃくちゃに高く、企業経営はROE無視でしたから、長期投資など愚行だったのです。


 平成元年に、これから長期投資します、などと言っていた人がいたとすれば、「これから私は大損したいと思っています」と言っているに等しかった、ということです。(個別銘柄選択で損を逃れることはできたでしょうが、それはなかなか難しかったでしょうね。)


 さて、令和時代、これから、わが国はどの方向に進むのか?


 自由で活発に市場参加者が活動する株式市場が維持されて、そうした市場で株主の「ガバナンス」が利くかどうか?によるところが大きいだろう、とも思いますし、わが国の世論がそれを受け入れるかどうかにもよるでしょう・・・


 アンチ資本主義的な政治情勢になればちょっと危ない、ということでしょうね。


 それに何よりも、8%を超える水準のROEをきちんと達成するという、企業経営者の強い意思と能力があるかどうか・・・


 いずれも、今のところ、だいじょうぶという気がしていますが・・・


私のお奨め

 税制優遇のある株式及び株式関連商品への投資の仕組みとしては、つみたてNSAとiDeCoの他に、一般NISAがあるわけですが、実のところ私のお奨めは、


・iDeCoと一般NISAの「組み合わせ」です。


 令和の日本が、アンチ資本主義に傾いて、「ROEなど眼中にない」などというふざけた社会になったとしても、世界的な金余りを背景に「投機的な魅力」ある株式市場はなくならないでしょうから、一般NISAの無税枠を活用して、個別株への投機で儲けるチャンスを残しておきたい(あるいはそうできるように経験を積んでおく)という意味合いがあるものですから。(一般NISAは個別株を対象とする税の優遇措置を使えます。)


 具体的にいくらiDeCoに投資するか、といったお話も番組の中でできればと思っています。それから、すでにiDeCo世代を通り越してしまった個人投資家の方々に何をお奨めするか?といったこともお話しできればと思っています。


令和元年7月5日

証券アナリスト

松下律

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