Logo stockvoice

ブログ:Onevoice

卵の話

中嶋 健吉

2019/08/15 07:33

63bb8f1f bbe1 4cb5 b2c9 d949c0883e6a castphoto14 nakajima

卵は好物の一つです。幸い家内も劣らず卵好きの為、夕食のメニューで悩んだ折にも、卵料理であればお互い納得できるメリットがあります。ところがこれに反して息子は大の卵嫌いで、彼によれば小さい頃から卵を食べ続け、特に無理やり食べさせられた記憶が邪魔しているとか。家内ともども無理強いした記憶はないのですが、卵好きからは食べない選択は無い、との無言の圧力を掛けていたのかもしれません。


子供の頃の1950年代、卵は極めて貴重品でした。今でも鮮明に覚えているのは、母親が親戚の病院見舞いのお土産に、モミ殻を敷いた箱に卵を並べ、割れないようにして静々と差し出した光景です。今に引き直すと、高級マンゴーを土産にする感じでしょうか。その当時は極めて貴重品だったのです。肉食が一般的ではなかった江戸時代以前では、卵は貴重なタンパク源で、特に病人の栄養源だったのでしょう。そうした歴史的な背景もあり、日本人の卵好きは我が家だけの事では無いようです。国際鶏卵委員会が発表した2017年の年次統計では、年間一人当たりの鶏卵消費量の第⒈位はメキシコの363個、2位は日本の333個、3位中国(307個)、4位ロシア(305個)と堂々の2位です。


卵料理は各国独自のものがあるのですが、唯一日本が独自性を持つのが「卵掛けご飯」に代表される「生食」の文化です。私の知る限り卵を生で料理に使うのは、フランス料理のステーキタルタル(タータンステーキ)位でしょうか。生肉に香辛料で味付けし食するのですが、そのつなぎに生卵の黄味を使うものです。話は少しそれますが、初めてパリに赴任した最初の夕食接待で、タルタルを知らないまま適当にソースと訳し、出てきた料理にびっくり且つ大恥をかいた経験があります。


同じ失敗では、アラブから顧客のディナーにすき焼きを供したことです。私どもには香しい醤油の煮た匂いも彼等には不興で、且つ生卵で食すことにメガトン級の驚きを与えた事です。彼らの住環境から生食はあり得ないことなのです。卵に付いたサルモネラ菌は食中毒の一番の原因で、イギリス駐在中も日本の貧乏学生が、イギリスの卵を使った掛けご飯で、食中毒に罹ったとの話をよく聞きました。日本とフランスが、食文化の先頭を切っている隠れた事実かもしれません。そういえば暫く卵掛けご飯を食していませんでした。 

(中嶋)