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材料待ち

松下 律

2019/08/23 08:20

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閑散

 小動き、時々売り仕掛けに惑わされる、いずれにしても何かの材料待ち。


 今ですと、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の発言待ち(プラス、トランプ大統領の反応待ち)ということになるでしょうか。

 

 米中の対立はいよいよ本格的に長期化、を思わせるものがありますので、トランプ大統領が譲歩するとなれば相場にはプラスなのでしょうが、目先はあまり動きなしと見えます。


 となりますと、パウエル発言待ち、となるわけですが、以下のシナリオのとおりでして、利下げに積極的、消極的、どちらでも日本株にはネガティブな要素があるので嫌なところです。


・利下げに積極的な発言 ⇒ NY株上昇、ただし、円高・ドル安 ⇒ 日本株に下落圧力


・利下げに消極的な発言 ⇒ 円安・ドル高、NY株にはややマイナス ⇒ NY株が売られると日本株に下落圧力


 いまどき「アベ・トレード」もないものだろうに、とは思うのですが、何しろ需給の悪い日本株ですから、企業業績の向上がはっきりとしない今はどうしても売り圧力を強く意識せざるを得ないのが残念です。


 日経平均の計算上の一株当たり純資産が2万円ちょっと、ということで、PBR=1倍を大きく下回って売るつもりはさすがに売り筋にもあるまい、と下値は限定と思うものの、相場はなかなか上向かないようです。


 日本株はとにかく需給の改善がないと、NY株がどれだけ上がろうとすんなりと追随することが難しいようです。

 

 需給の改善には、


1.自社株買い


2.NISAなどの仕組みを使った継続的な買いの拡大


3.いわゆる「終活売り」の減少


などが必要でしょう。


 企業収益が、今年も来年も二けた増益間違いなし、といった情勢になれば、海外勢の売りが止まるでしょうから、相場の上昇が期待できるのでしょうが、今の情勢ではなかなか海外勢の売りが止まらないようです。


 資産形成のための長期投資目的の買いは、粛々と入っているでしょうし、そうした買いを入れる投資家は別に今の状況を呪ってはいないと思いますが、短期のトレーディングを志向している向きはどうしているのだろうか?と思うことがあります。


 いわゆる決算プレー(おそらくは、業績があまり良くなかった銘柄の空売りが中心)、とか、半導体関連銘柄の買い、とか、好取組を囃すことができそうな銘柄の買い、とか、配当利回りの高い銘柄の買い、とか、そんな工夫があるのではないかと思ったりします。


日本人はなぜ株を買わないのか?

 以前はこのようによく言われたものです。老後2千万円問題をきっかけにNISA 口座が急速に増えている、などと聞きますと、すこしずつ変わりつつあるかみ見えますが、依然として個人金融資産に占める株式(と株式関連の投資信託など)の割合は低く、日本株保有比率に占める個人の比率は低い(少なくとも外国人の比率より低い)という状態です。


 なぜ日本の個人は株を買わないのか?あるいは、買わなかったのか?


 個人の行動が合理的でなかったとはなかなか考えにくいので、何か納得の行く理由があったのではないかと思います。


・そもそも株式に投資する必要がなかった。


・株式の投資成果が低すぎた。← バブルの崩壊、企業統治の不備。


・株式投資をする余裕が多くの若い人たちになかった。← 年功序列賃金体系


・退職金制度があった。


 さまざまな理由が考えられます。同時に、今現在、そうした理由の多くが消滅しつつあるようにも思えます。

 

 日本株の需給を考える上で非常に重要な視点であると思っています。個人が買わなかったとき何故海外勢が買ったのか?とか、いろいろ面白いこともあるように感じています。


ROEの重要性

 こんな人を考えてみます。


・これから40年くらい給与生活者として暮らそうとしている。


・定年まで40年間A社に努めると、退職金を3000万円もらえそうだとします。ただし、40年間勤めないと退職金はほとんどないものと仮定します。


・その人は、A社以外の会社(転職を含めて)で働くと、A社に勤める場合より、月3万円(年間で36万円)の収入増がありそうだとします。


・その人は、月3万円の給与増があるとしたら、その3万円を複利で運用でき、かつ無税の仕組みで積み立て投資をして資産形成するとします。


・その投資信託は、TOPIXとほぼ同じ成果をもたらすものとします。


・また、日本企業のROEは8%程度を上回る水準を維持できるものとします。


 さて、ここで問題です。


 「この人が、A社に就職して定年まで勤めて受け取る3000万円と、A社以外で働いて、月3万円ずつ積み立て投資をして得る額とどちらが大きいか?」


 ここで重要なのは、この人の毎月3万円の積み立て投資がどれくらいの成果を年々あげるか?ということです。


 条件として書きましたように、日本企業のROEが8%以上を維持できるとしますと、この人の積み立て投資は年8%の複利で回ると考えることができます。


 そのように仮定しますと、この人の積み立て投資は40年後におよそ1億円になりますから、3000万円の退職金をもらうよりはるかに有利となります。


 毎月3万円の積み立て投資が40年で1億円ですから、毎月1万円なら約3300万円です。40年働いて3000万円の退職金は、毎月1万円の給料の増加分を積み立て投資した程度のもの、ということになります。


 給与生活者がどのように職を選ぶか?は条件があまりにも複雑すぎて簡単な答えがあるとは思えないのですが、株式投資の長期的な成果が年8%程度以上あるかもしれない、ということであるなら、退職金目当てに一生同じ会社で働くというスタイル以外に多くの選択肢がある、ということは言えそうです。


 企業がある程度以上の水準のROEを達成し続けることがいかに重要か、という話です。


令和元年8月23日

証券アナリスト 

松下律 

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