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リスクパリティー

松下 律

2019/11/15 08:20

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リスクパリティーの売りにまで持って行けるか?

 先週の11月SQまでの3ヶ月ほどは相場はほぼ買い方の完勝でしたが、今週に入ってからはそうでもない、という推移が続いています。ただ、日経平均で見て下落幅はせいぜい500円規模で、大きくはありません。(今のところ。)


 来月12月のSQまでに日経平均が2万4千円を超える上昇があれば、12月SQまでの相場も引き続き買い方の勝ち、逆に2万2千円を下回るようなことがあれば、ほぼ4ヶ月ぶりに売り方の勝ち、といったところでしょうか。


 買い方勝利が続いている間、グローバル景気、日本の企業業績、といったファンダメンタルズはけして良かったわけではありません。材料面から見ましても、米中の対立、欧州情勢、中東の地政学リスク、等々、相場へのマイナス要因多数、という状況でした。


 それでも相場上昇が達成できたのは、売り方の買い戻しのおかげ、半導体分野の復調のおかげ、といったところだったように思います。


 売り方からすれば、「相場がまちがっている」感を強く持ちながら評価損に耐え忍ばざるを得なかった、という展開だったように思います。


 振り返りますと、昨年の10月上旬からの暴落相場では、買い方が「相場がまちがっている」感を持つ中で、売り方が大勝利だったように思います。


 相場の見通しは難しいのですが、ここから年末くらいまでの期間、どんなシナリオに「賭けるか」という意思決定は市場参加者それぞれができることです。さて、どんなシナリオに賭けるか?


 年末に向けての一段高シナリオを想定して、「ここからいよいよ新規の買いポジションを作る」というのは勇気の要ることだろうと思います。


 現実的な「賭けるシナリオ」という意味からすれば、以下のようなものだろうと思います。


1. さいわいにして8月中下旬以降の安いところ、日経平均で見て2万1千円より下の水準で作った買いポジション(指数先物、ETF、ハイテク系の個別株など)があるなら、利食いはするものの、ある程度の買いポジションを年末までの上昇に賭けて残す。


2. 今回の上昇相場を見過ごしたのであれば、新規の買いは見送る。


3. 個別銘柄を見ますと、まだ上昇していないものも多くありますから、そうした銘柄の買いポジションを作る。(ただし、出遅れを狙うという戦術は、三番手くらい以降になると往々にしてうまく行かないことが多いものです。)


4. 先週の「幻のSQ値=日経平均2万3600円台)」を当面の高値と踏んで、年末に向けて相場下落に賭ける。(売り方勝利のシナリオに賭ける。)


 売り方勝利のシナリオに賭けるとしますと、悪材料が頼もしい味方ということになるわけですが、さて今の段階で何か頼りになる悪材料はないか、と見渡しますと、けっこう数は多いかもしれません。


1.米中交渉の不調

2.香港情勢悪化

3.日韓の対立

4.欧州情勢の悪化

5.中東の地政学リスク(テロなど)

6.米金利の上昇

7.米大統領弾劾

など。


 数は多いものの、どれも今ひとつ破壊力に欠けるような・・。売りポジションで儲けよう、というのであれば「望むらくは」日経平均で2千円以上の幅の下落(そういう相場であれば、個別銘柄なら株価半値に下落、といったこともあるでしょう。)といったところかと思いますが、これらの悪材料の破壊力ではちょっと・・という感じでしょうか。


 昨年の10月から年末にかけての暴落商状の再来を望むのはなかなか難しいのでは、と思います。当時は買い方・売り方の振り子がかなり買いの方に振れていましたので。


 となりますと、売り方として期待するのは、上記の6.に関連して、また、2018年の1、2月に起きた「リスクパリティーの売りの再来」といったところかもしれません。


 いつも書いていることですが、20年、30年のスパンで資産形成のために毎月積立で株式投信を買っている、といった投資家からすれば、年末に向けて相場が上伸しようが反落しようが、気にする必要はないと思いますが、数週間から数ヶ月スパンの相場変動から利益を汲み上げようとする向きは、来週以降、年末までの相場変動に大いに注目している、ということかと思います。


議決権の行使

 機関投資家は株主総会において、スチュワードシップ・コードに従って議決権を行使する、というのが今はふつうになっています。


 一方、個人投資家は形式的に議決権を行使するか、行使(のために総会に出席すること)をしないことも多い、というのが現状です。トレーディングの「途中で」たまたま株主名簿に名前が載った、といった株主は議決権行使に興味など持たないのは当然です。


 総会への出席者が少なくなり過ぎると定足数が心配になる、などということも起きますが、かと言って定足数を満たすために個人株主に議決権の行使を求める、と言えることでもないように思います。


兜町ルール

 会社の経営に不満なら、株主総会での決議を通じてその意思を伝えるより、さっさと手持ちの株を売ってしまえばいい、というのが伝統的な株式市場のルールでもあります。


 市場で株が売られて株価が下がれば、経営者は株主からの圧力を受けて経営を改めるだろう、というわけで、別に株主総会で議決権を行使しなくても、経営者へのメッセージにはなるのです。


 株主総会では多くの議案が決議されますが、もっとも重要な議案はおそらく「取締役の選任議案」であろうと思います。


ROESG

 株主は経営者に「きちんとした経営をして」、「株主に利益をもたらす」ことを期待しています。


・きちんとした経営=ESG

・株主の利益=ROE


というわけで、このふたつを一緒にしてROESGなどと言ったりします。(注)


 ROESGに不熱心な経営者は、株主総会における取締役選任議案で賛成票を集められず、票数によっては選任されない、などということが起きる、というプロセスを通じて、経営に規律を与える、となっているのです。


しかし現実には

 ほとんどの会社で、会社提案の議案における取締役選任の賛成票の比率は90%以上です。


 つまり、たいていの経営者(取締役)は株主総会において選任されないなどということはない、ということです。(ごく稀に選任されないことがありますが。)


 としますと、株主総会における取締役の選任議案に賛成しようが反対しようが、それが経営者への圧力などにならないのではないか、という考えが思い浮かびます。


 この点については、数多くの研究があるそうですが、私が直近に読んだある論文によりますと、たいていの取締役は90%以上の賛成票を集めて選任されるとはいえ、株主の投票行動によって、上記のROESGに影響を及ぼすことがあると見られる、とのことでした。


 つまり、選任の賛成票が少ないと、経営者が賛成票を得ようとしてROESG向上に努力する傾向がある、らしいのです。


 個人株主は、スチュワードシップ・コードのある機関投資家のように、株主総会において議決権を行使することが重要だ、ということはないと私は思いますが、例え自動的に選任されているかに見える取締役であっても、賛成票の微妙な差によって行動が変わることがある、ということからしますと、もっと多くの個人株主が議決権行使に興味を持ってもいいのかもしれない、と思います。


(注)

 私は個人的には、ROESGのうち、経営者の「目標」はあくまでROEであり、ESGは、ROE向上を目指す際に留意すべき「制約条件」のようなものであって、経営者の目標がESGであるという考え方には違和感を持っています。


2019年11月15日

証券アナリスト

松下律