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まだ決着しないのか・・

松下 律

2019/11/29 08:20

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米中と需給

 米7-9月期GDP数値の上方修正(+1.9%⇒+2.1%)を受けて、連日のDJIA最高値更新、これで日本株も上昇、と買い方は勇んだろうと思うのですが、朝方に、トランプ大統領による香港人権・民主主義法案への署名⇒円高・先物安、となって足元をすくわれてしまった、というのが昨日でした。


 とはいえ、売り方が勢いづくほどの下落となったわけではなく、多くの市場参加者はサイドラインで様子見、となっているようです。


 いずれにしましても、当面は「米中交渉の結果」と「株式需給」が市場参加者のもっとも大きな関心事なのでしょう。


 テクニカル指標面の過熱感も徐々に薄れて来ていますし、投資尺度から見た割安感の縮小はあるものの、年末に向けて一段高の推移を想定できないことはなかろう、といったところなのでしょう。


転機はいつか?

 とはいえ、このまま、ここから数か月以上「売り方惨敗」局面が続くとも思われません。


 米中交渉は、香港情勢がどうであろうと近々(これまで言われて来たとおり)部分合意するのでしょう。合意が済んでしまえば、相場の材料としての米中合意はとりあえずイベント通過、となるはずです。


 この3か月の上昇相場の「燃料」だった「売り方の買戻し」も、おそらくほぼ半数は終了したでしょう。また、海外勢の日本株買越額も細りつつあるようです。


 「グレー・リノ」としての世界の債務懸念、米景気の先行き、欧州情勢、米中の長期的な対立、各地の地政学リスク、等々、相場が「当面の天井圏」と意識されれば、「悪材料」と化す出来事には事欠かない情勢です。


 米国、日本ともにですが、株式相場のボラティリティの低下が見られます。ある程度ボラティリティ低下期間を経ると、またぞろ「リスク・パリティー」の売りを期待して投機筋が売り仕掛けする、と過去に何度も見て来た相場展開をまた見ることになるかもしれない、そんな風に考える市場参加者が増えても不思議ではないでしょう。


 8月下旬以降、日本株はよく上がってくれたものです。何しろ日経平均で3000円以上上がったのですから。当初はついて来られなかったマザーズ指数もようやく追いつき始めて来ています。


 長期の上昇相場を見越すとしても、その途中で健全な調整、という感覚もあるでしょう。そろそろ今回の上昇相場の短期スパンの転機について考えておくべき時期かもしれません。


外国為替相場

 昔は、外国為替の交換比率は「固定」制が中心でした。日本円と米ドルであれば、例えば、1ドルは360円で固定、といった具合で。


 それが40年ほど前から「変動」相場に移行した経緯があります。外国の通貨を買ったり、売ったりする場合、固定制の方が便利なようにも思えますが、変動相場制には、さまざまな「変化」を市場で形成される価格で調整するという機能がありますので、メリットが多い、というわけで今に至るまで変動相場制が続いています。


 例えば、日本円と米ドルを考えます。現時点における、日本円と米ドルの「正しい」価格があるとしますと、その価格を以って「固定価格」とすればいい、ということが言えます。(しかし、そうした「正しい」価格を見つけるのは容易ではないでしょうね。)


 加えて、そうしたとしますと、その「正しい」価格は、経済情勢等の変化によって「変動」して行くでしょうから、そのように決めた「固定相場」は必要に応じて「変動」させて行かないとまずいでしょう。(通貨の切り上げ、切り下げです。)


 となりますと、変動相場でいいのでは、ということになる、変動相場制採用の根拠のひとつはこうした事情である、と言っていいように私には思えます。(必要に応じて切り上げ、切り下げするより、市場での日々の変動で対応してもらう方がいい、ということです。)


通貨に正しい価格はあるのか?

 よく「購買力平価」とか、「金利平価」といったことが言われます。今日の放送では、米国でハンバーガーが1ドル、日本で100円の場合について、両国のインフレ率の差で両国通貨の価格が変動する、という説明をしようと思っています。


 いずれにしましても、購買力平価の考え方からしますと、「インフレ率の高い国の通貨はインフレ率の低い国の通貨に対して相対的に下落する」ということが言えます。


 購買力平価説が、唯一の正しい通貨の価格形成の理論、とはとても言えないと思いますが、けっこう説得力のある考え方のように私は思います。(購買力平価+資産選好=資産需要、で大方決まるのかもしれませんね。)


FX市場での(ポジティブ)キャリー・トレード

 金利差がありますと、より高い金利を求めて低金利通貨から高金利通貨に資金を移すという取引、キャリー・トレードと一般的に言われる取引、がよく行われます。


 円を保有する(または、円を借り入れた)投資家が、その円をドルに換えてドル金利を得る、といった取引です。FX取引を使いますと、レバレッジによってかなりの金額の収入、スワップ収入、を得ることができます。


 スワップ収入は、それぞれの国の名目金利の差です。例えば、今ですと、日米の名目金利差はおよそ2%弱なので、日本円を米ドルに換えますと、1万ドルについて1日50円くらいのスワップ収入が得られます。


 FX取引では、レバレッジが使えます。例えば、日本円100万円(米ドル換算およそ1万ドル)を証拠金にして20倍くらいレバレッジを掛けますと、米ドルで20万ドルくらいの買いポジションを持つことができます。これですと、1日のスワップ収入は1000円くらいになります。毎日のランチ代が出る、くらいの収入です。100万円投入すれば毎日ランチがタダになる、と言えるかもしれません。


 ただし、米ドルの買いポジションというリスクを取っていますので、1円ドル安・円高になりますと20万円損が出て、ランチ代どころではなくなります。

 

 逆に、1円円安になれば、20万円の儲けで、ランチは時々うなぎかステーキでもOK、となります。


キャリー・トレード・クラッシュ

 通貨の「本源的価値」は、長期的にはどうやら購買力平価を中心に測れるのではないか、と思われるのですが、短期的な変動要因は?と考えますと、いろいろな要因が言われるものです。国際収支、地政学的要因、季節要因、投機的要因、などなど。


 しかしながら、現時点では、どうやら「金利差」が一番市場参加者が重視する変動要因になっているようです。


 各国の中央銀行の金融政策に注目が集まるのは、政策の変更⇒金利の変動⇒金利差の変動⇒FX相場の変動、となるからでしょう。


 つまり、今のFX相場では、購買力平価などが示す外国為替の妥当値を意識しつつも、金利差に注目したキャリー・トレードが相場を動かしている、そこに地政学要因(今なら米中摩擦、要人発言)などがからんで来るようだ、といったところでしょうか。


 ここで注意しなければならないのは、(ポジティブ)キャリー・トレードは金利の高い国の通貨を買う(買いポジションにする)わけですが、そもそも購買力平価の考え方からしますと、金利の高い国はインフレ率も高いでしょうから、その通貨の価値はしだいに減価していくはず、という点です。


 キャリー・トレードでは、インフレ率が高くて将来価値が下がりそうな通貨を買って行ってしまう、ということです。トルコリラ、メキシコペソ、などの高金利通貨の買いを想定すれば理解しやすいでしょう。


 こうしたことが行われると起こりそうなこと、あるいはすでによく起きていること、は、キャリー・トレードがしばらく続いて上昇した高金利通貨が、どこかで突然下落する(クラッシュする)ことがある、ということです。


 こうした現象は、「キャリー・トレード・クラッシュ」と呼ばれています。振り返りますと、割と頻繁にFX市場で起きているように思います。(こうしたクラッシュを、投機筋やアルゴ取引の連中は狙っているはずですよね。)


 今回は、「購買力平価」と「キャリー・トレード・クラッシュ」のことを書いたのですが、次回はFXと株式相場の繋がり、これが実に厄介なものに私には思えるのですが、について書いてみるつもりでいます。


令和元年11月29日

証券アナリスト

松下律