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ブログ:Onevoice

半値戻しほゞ達成

松下 律

2017/11/10 08:00

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 日経平均の過去最高値は38915円、最安値は7054円ですから、最高値から最安値までの下落幅の半値戻しの水準は、23000円ほどとなります。昨日のザラ場で日経平均はこの水準を上回っていましたし、引け値もほゞこの水準でした。日経平均最高値示現の1989年12月からおよそ27年を掛けて、日経平均はようやく半値戻しを達成した、ということになります。何と長い年月が掛かったことか。半値戻しは全値戻し、と言います。今後数年を掛けて日経平均が過去最高値をクリアしに行けるかどうか?期待したいものです。


 今年9月末を起点とする上昇相場は過去の連騰日数記録を更新するなど、異例の強調相場だったわけですが、昨日の1日出来高5兆円規模、日中の変動値幅850円、といったところを見ますと、本日のSQを通過してようやく一区切り着くか、といった感じではあります。海外勢の継続買い、国内個人は売り一辺倒、というよくあるパターンだったわけですが、個人の市場参加者にとっては扱いにくい相場付きであったろうと思われます。


 この間の指数の騰落は以下のようになっています。


日経平均      19239円 → 23382円        +21.5%      

トピックス     1578ポイント → 1844ポイント   +16.9%

ジャスダック平均  3311円 → 3725円         +12.6%

マザーズ指数    997ポイント → 1152ポイント             +15.5%


 日経平均が突出して上昇したのは一目瞭然です。日経平均を「一銘柄」とみなしての(指数先物を利用した)投機買いが集中した、ということだったのでしょう。


 ただ、この日経平均の上昇率そのものは、昨年11月の米大統領選挙後の上昇相場の上昇率(+21.7%)よりわずかではありますが小さく、極端に大きな上昇だったというわけでもないようです。1年の内にはこんな上昇相場がある、という位のものだったのかもしれません。ただ、連騰に次ぐ連騰という相場付きと、長年抜けなかった水準を抜いたこと、などが強烈な印象を残した、という相場だったのでしょう。


 DJIAとの値位を比較しますと、9月半ばには、日経平均はDJIAより2000ポイント以上数値が下だったのですが、それがほとんど同じ水準にまで達したわけですから、この間の日経平均の上昇の大きさがよく分かります。


 先ほど、個人の市場参加者にとっては扱いにくい相場付きだった、と書いたのですが、これはあくまで感覚的なものです。新聞のコメントなどでよく「上昇相場について行けない個人」とか、「押し目待ちに押し目なし」などと、取りようによっては意地悪で揶揄するような言いようが出るのですが、個別銘柄ならまだしも、例えば日経平均という指数を押し目買いしようなどと待っている個人の市場参加者はそれほどいるわけでもなく、個人が売り一辺倒と言っても、それは要は利食い売りしている、というだけのことでしょうから、海外勢主導の連騰相場の中で売っている個人の感覚はけっこうさばさばしているものなのかもしれません。


 企業収益面から見ますと、今回の日経平均23000円超えが、上場企業の利益向上のおかげであることは確実です。今後、日経平均の3万円超え、史上最高値奪回のためには、上場企業の利益がここから少なくとも3割や4割は増えなければダメということもほゞ確実なことです。個人消費を喚起して名目GDPを引き上げる、そのために賃上げを達成する、といったファンダメンタルズの上に、企業の経営努力によって利益を向上させる、あるいは自社株買いを実施する、といった流れが確実に継続するかどうか、このことに注目して行く必要があります。


ニュース・出来事から


景気拡大58か月でいざなぎ超え

 成長率が小さいせいもあって、こういった景気拡大に対してはすぐに「実感なき景気拡大」といったコメントで出て来ます。しかし、たいていのひとは経済規模が多少大きくなっても「実感」することなどないものです。アベノミクス開始以降、曲がりなりにも経済規模の拡大が続いて、雇用が増え、求人倍率が好転し、大学卒の就職率が改善し、自殺と企業倒産が減少したということが重要であって、今後賃上げ→個人消費増加、となれば米中に引き離されるばかりだったGDP規模でも少しは追い付く、となることを期待したいと思います。


9月、実質賃金ー0.1%、名目賃金+0.9%

 これはなかなか面白い対比です。要は物価上昇率が少しずつ大きくなって来ている、ということを示しているのでしょう。賃金上昇とインフレ率の上昇を比べれば、前者の方が後者より動きが遅い、というのは理解できることです。こうなった以上は、来春闘においてかなりの賃上げを達成しないと、せっかくの景気拡大に水を差すことになってしまいます。


サウジの内紛

 要は権力闘争なのでしょうが、世が世なればこんなことが起きたら、原油価格暴騰、日本株大暴落、となっても不思議ないところです。それが起きないのは、原油市場がシェールオイルの供給によって安定していること、いわゆるオイルマネーの日本株保有が相対的に縮小したこと、などが影響しているのでしょう。ただし、中東の混乱は潜在的に大きなリスク要因です。注意して見ておくべき動きだろうと思います。


パラダイス文書

 日本にはあまり悪影響を及ぼさないと思われますので、さほど注目されないのでしょうが、税の問題は企業行動にとって実に大きなものです。アメリカが法人税率を20%に下げようとしているのは、自らの国の法人税率をタックスヘイブンの税率とそん色ないものにして、国内に企業を引き戻そう、留めておこう、という趣旨でしょう。わが国の法人税制は企業をタックスヘイブンに向かわせないように作られていると思いますが、法人税率の水準を巡ってはこれからさまざまに論じられるようになると思われます。(法人税の引き下げが株主の利益増→株価上昇、となることを期待したいところです。)


平成29年11月10日

証券アナリスト

松下律