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しばらくは様子見

松下 律

2020/01/24 09:00

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健全な調整

 何らかの悪材料をきっかけに数か月スパンの上昇トレンドが一旦途切れる、といった調整を期待するというのが米国株に対する大方の見方だろうという気がするのですが、米イランの軍事的緊張、新型コロナウイルス感染蔓延による経済への悪影響、大統領弾劾裁判、といった程度では売り方が勢いづくほどにならないようです。


 金融緩和(ステルスQE)、米中摩擦の一服、半導体分野の復調、これからやってくる5G、AIなどをベースにしたGAFAM系企業の業容拡大期待、などを見ますと、大きな評価益を持つこととなったすでにこれらの銘柄を保有しているファンドなどは、新規の買いをしないにしても持ち株は保有持続、そこに継続的な買いが世界中から入って来る、という情勢ですと、売り方に付け入るスキがなかなか見つからないのでしょう。


 要するに地合いがいい、ということなのでしょう。地合いによっては、米中も、中東情勢も、金融政策も、コロナウイルスも、何もかも悪材料と化すのでしょうが、今は到底そうはならないようです。テスラ株などが典型でしょうが、空売り筋は苦しい展開が続きそうです。


 とはいえ、積極的に買うということにはならないのではないか、という気もします。ポジションに余裕のあるふつうの市場参加者は、ここから本格化する業績発表の数字、経済統計数字、などを注意深く見ながら様子見しておくという局面なのでしょう。


 少し先を見ますと、どうやら米国株式は、おそらく2000年春にかけてあったドットコムバブルと似たようなバブル相場を演じ始めているようですから、近い将来やって来る米国株のバブル相場(おそらくその時の中核銘柄はやはりGAFAM系だろうと思います。)を楽しみにしていればいいとは思いますが、足許ということであれば、健全な調整局面到来となるのを期待したい、といったところかもしれません。


 経済ファンダメンタルズが米国よりも劣る、中央銀行も消極的、GAFAM系の企業が少ない、需給も相対的に悪い、ということで、日本株の方が、売り方から見れば魅力的、と映っているのではないか、と感じます。


 何か悪材料の「芽」を感じ取ると、日本株は売り崩せるかもしれない、という感覚で先物主導でけっこう売りが出るな、という印象を持ちます。


 ただ、米国株の堅調に支えられて、日経平均で1000円を超えるような急落を見ることなく(年初の米イラン緊張時に一瞬ありましたが)ここまで来ているのでしょう。円高・株安、というのが日本株の売り方から見て望ましい相場ですが、そういう局面が到来するかもしれない、ということは考えておくべきだろうという気はします。ただ、下落局面があるとしても、それは健全な調整局面と捉えておくべきだろうと思います。


日本経済と製造業

 私は、日本の個人の所得が増加⇒消費増大⇒経済成長⇒様々な問題解決、というシナリオが実現すれば素晴らしいことだと思っています。そのために日本の製造業が活性化されることが重要でしょう。しかしながら、実現には、なかなかに厄介な事柄が多いようです。しかし、日本の製造業の将来が暗いとも言えないように思います。


 過去30年間を振り返りますと、


・名目GDPは、おおむね500兆円~550兆円の横ばい圏の動き。

・空洞化(ホローイングアウト)がいつも話題になった。日本から工場が海外に移転、ということです。

・造船、テレビ、携帯電話、PC、などで日本は負け続けた。

・日本の製造業の就業者数は、ピーク時1500万人、現在は1000万人に減少。


 ネガティブな気分になるのも致し方なし、かもしれないのですが、一方で、


・日本の製造業の付加価値はピーク時120兆円、今は下がったとはいえ、なお110兆円強ある。

・GDPに占める製造業の割合も下がったとはいえ、まだ20%強ある。(ドイツも日本と同じ程度、英米はすでに10%くらいになっている。)

・製造業従事者の一人当たりの付加価値が大きく向上している。

・総合的な組み立て産業である自動車はわが国は競争力強く、電子部品、高機能素材分野、半導体製造装置、ロボット、素材分野などでも世界をリードしている。


付加価値の源泉

 ある学者の研究によると、統合型ものづくりでは、その競争力の強さは、機械の性能だけではなく、付加価値密度の高い生産ができるかどうかで決まって来る、と。付加価値密度は、高いと言われるトヨタの生産現場でも30%程度とされ、ふつうは5~10%に過ぎない。


 そして、付加価値密度を上げるのに必要な要素は、全体最適に向けて協力して働く全社的な人的資源が必要である、と。


 ここで思い出すのは、日本の交通機関の時間的正確さの源泉、ということです。おそらく、日本の交通機関の時間的正確さをもたらしているのは、単に鉄道会社の正確さだけではなく、乗客の秩序だった行動によるでしょう。乗客が全体最適を意識して行動してくれるおかげで、日本の交通機関の時間的正確さが保たれているのだろう、と。


 日本の統合型モノづくりの世界で、全体最適を意識して働く人的資源が保たれるのであれば、日本の製造業の将来は決して暗いものではないのではないか?と想像できます。


トヨタは投資価値を保てるか?

 結論から言えば、トヨタ(を始めとする日本の製造業の一部)は、将来に亘って世界的な競争力を維持し続けることができて、投資価値を保ち続けるのだろうと私は思います。


 過去30年に亘って、とりわけ中国経済の躍進によって、競争力を失うことの多かった日本の製造業ですが、現状では何とか踏みとどまって、近い将来再び成長を取り戻す生命力を保ち続けることに成功した、ということかと思います。


令和2年1月24日

証券アナリスト

松下律