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行き過ぎリスクと出尽くしリスク

松下 律

2020/07/17 08:40

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中国経済V字回復

 昨日日本時間の午前11時、注目の中国第2四半期のGDP統計数字が発表となりました。GDPの伸び率は予想の+9.6%を上回る+11.5%(QoQ)、ということで中国経済はコロナ禍を克服してV字回復か、という数値でした。(個人消費は予想より若干悪かったようですが。)


 で、株価は?と見ますと、中国上海総合指数は前日比4.5%の大幅下落、どうやら、「織り込み済み」、「知ったら仕舞」、「材料出尽くし」を地で行った形です。


 世界的な金融緩和の中で官製相場を展開中、というのが中国株式市場でしょうから、このまま下落トレンドに突入ということは考えにくいのですが、考えてみれば、香港問題もあって米中の対立は激化しているわけで、コロナがなければずいぶん大きな悪材料とみなされていたに違いないという環境下での株価上昇だったな、と改めて思うところです。


 米株、日本株の強調も企業業績から見ますとけっこう行き過ぎリスクを意識せざるを得ない局面のように見えます。中央銀行による資金供給、政府の財政支出増も、ある所まで行けば少なくとも勢いは鈍るわけですから、ここからをどう見るか、難しいところです。


 もう一つ需給の良さがあるわけですが、売る人が少ないから需給が良い、という面もあったに違いありません。行き過ぎリスクと出尽くしリスクを意識する人が増えてくれば、少し売っておこう、とか、買いを控えよう、となるかもしれません。


 テクニカル指標のひとつに騰落レシオというのがあります。この指標はこのところずっと数週間くらい売られ過ぎとされるゾーンにいます。だとすれば、そろそろ大きく相場反発か、ともなるのですが、売られ過ぎのサインが出たまま日経平均がやや強調という推移をして来たということは、一部の限られた銘柄群に買いが集中していたのでは、という見方もあることになります。


 このところ毎週話しているのですが、円ドル相場と日本株相場のデカップリングのような現象も見られて、夏場に円高⇒株安、というスペキュレーションがしにくいのかもしれませんが、夏場に大きく株価上昇というシナリオには慎重にならざるを得ない、ということのようです。


大損を避ける工夫

 話を分かりやすくするために、「大損とは、保有するリスク資産で50%を超える損失を被ること」と定義して話を進めます。


 誰しも、大損はしたくないはず、大損を避けるために工夫をしたい、とかしているはず、何か大損を避ける確実な方策はないものか?

ということでそういう良い工夫について考えてみたいと思います。


 投資にせよ、投機にせよ、相場における価格変動によって損益(実現損益及び評価損益)が生じるわけですから、「最も確実な損失回避策」は、「相場を当てること」です。


 研究と実践、研鑽を積んで、相場を当てることができるようになれば、大損するリスクなどなくなります。大損を避ける最も確実な方策は「相場を当てること」です。


 「相場を当てるという手法」は最も確実な損失回避策なのですが、この策には一つだけ欠点があります。相場は当たるとは限らない、のです。


 相場を当てるという最も確実な損失回避策が使えない、として、それではそれ以外の方策で何か良い工夫はないものか、と考えてみます。


 例によって、「投資」と「投機」に分けて考えてみます。


投資の場合

 実のところ私は、株式投資をふつうに言われているようなやり方で実行しているのであれば、大損のリスクを考える必要はほとんどない、と思っています。(ふつうのやり方とは、グロース投資、バリュー投資、分散、長期、継続、理解できなものには投資しない、といった原則に基づいた投資という意味です。)


 例えば典型的な株式投資である、税制上のメリットを活用した月掛けの株式投資で、それなりの実績のある株式投信を購入し続ける、といったことを20年、30年の時間軸で実行した、という場合に、終わってみたら、資産が半分以下になっていた、となるケースはほぼない、という気がします。


 長期投資、分散投資、積立、ということを意識すれば、個別の株式投資でも同じようにリスクは低いと思います。投資対象の企業の事業と経営者に期待と信頼を置くことができる、という投資であれば、一銘柄に集中、といったことをしない限り、長期的にそれほど大きなリスクがあるとは思えません。


投機の場合

 投機とはある意味「相場予想に賭ける行為」ですから、大きな利益という可能性がある裏側に、そもそもいつも大損リスクを抱えているものです。


 投資の場合、相場変動を無視してもいい、くらいのところがあるのですが、投機を場合はそもそもその相場変動の予想に賭けるわけですから、無視していいどころではない、最大の注目点ということになります。


 投機で勝利するために、相場の研究を怠らない、ということになるのですが、相場の当たり外れを除外した何か良い工夫はないか、と考えてみますと、「賭け方の工夫」があるだろうという気になります。(レバレッジを使い方、はこうした賭け方の工夫の典型です。)


 こうした「賭け方の工夫」の中の重要な要素のひとつに「リスク管理」があります。リスク管理については、いろいろな情報がインターネット上にあります。研究しようとすれば、多くの情報が得られますので、研究の素材に困ることはないだろうと思います。


 中でも最も重要なのは、レバレッジの使い方です。投機において大損、という場合、ほぼ100%その原因は「レバレッジのせい」です。


 トレード手法等々、掛け方の工夫はここでは触れないことにしまして、ひとつ、「安全なレバレッジを使う工夫」について書いてみたいと思います。


 安全なレバレッジ、という言い方は矛盾していますが、借入を使ってレバレッジを掛ける、というやり方では、投下資金以上のリスクエクスポージャーを持たない(=元本超過損を避ける)という意味での「安全」ということは実現できません。


 これまでにも何度か触れて来たことですが、私の勧めたい「安全なレバレッジ」とは以下のようなことです。


1.回転のレバレッジ

 例えば100万円の資金を株式投機に投じる、とします。信用取引を使って100万円の資金をもとに3倍の300万円の売り買いのポジションを取ったとします。(200万円借り入れて元金の3倍のレバレッジを取った、ということになります。)


 そのポジションで15%の変動が起きますと、元金に対しては45%の変動となりますので、買いであれば株価下落、売りであれば株価上昇がその規模で起きますと、元金の約半分の損失が出て大損を被ったことになります。


 このレバレッジを使った投機を、「約1か月のタイムスパンで考えていた」とします。この、1か月スパンで、借入を使って3倍のレバレッジにして儲けを大きくしよう、としたのであれば、1か月のうちに元金を3回転させて儲けを大きくしよう、と考えることも可能です。


 資金100万円を三回転できれば、300万円を一回転したのと同じ儲けを実現できるかもしれないからです。


 これを私は「回転のレバレッジ」と呼んでいます。借入を使うレバレッジと異なって元金以上のリスクエクスポージャーにならない、というところがミソです。(ただし回転のレバレッジを使って儲けるには、それなりに相場を当てなければなりませんから、それはそれでけっこうチャレンジングな仕事です。)


2.オプションのデルタ

 これはちょっとややこしいのですが、オプション(具体的には日経225の指数コールオプション)の例で説明します。


 まずオプションのデルタとは?の説明ですが、


 「原資産価格が「1円」動いた時に、プレミアムの値段がいくら動くのかを示す (プレミアムの影響度合い)数値です。(他の条件が一定である場合を前提)原資産が変動した場合のプレミアムの変動幅を計る上で、目安として活用する指標となります。 


 デルタの値が高い場合は、原資産の変動によってプレミアムが大きく変動する可能性があり、デルタの値が低い場合は、プレミアムが変動する可能性が低い事を示します。


計算式:オプション価格の変化(デルタ分)=日経平均の変化×デルタとなります。


 仮にデルタの値が、「0.50」の場合、日経平均が100円動いた場合には、オプションの価格が50円(=100円×0.50)変動することを示します。コールオプションは正のデルタ値となり、プットオプションは負のデルタ値で表します。」

(金融/証券用語 カブドットコム証券)


 「オプションの価格(プレミアム)変動と原資産の価格変動との間の関係。ごく短い期間におけるオプションの理論価格の変化幅を、その期間での原資産価格の変化幅で割って計算する。グラフの横軸に原資産価格、縦軸にオプション価格をとった関係曲線を描いた場合、その曲線の傾きがデルタとなる。


 この曲線はオプション取引の原資産価格と権利行使価格の大小関係において、イン・ザ・マネーからアウト・オブ・ザ・マネーになるにつれ傾きが緩やかになる。例えば、コールオプションのデルタは0~1の間の数値をとり、イン・ザ・マネーになるほど1に近づき、アウト・オブ・ザ・マネーでは0に接近し、アット・ザ・マネーで0.5となる。一方、プットオプションのデルタは-1~0の間の数値をとる。


 デルタとは元々、数学記号として使用されるギリシャ文字の一種であり、差分、変化分、微分値などを意味する。」

(野村證券 証券用語解説集)


 オプションのプレミアム(価格)は、アウトオブザマネーの時は低く、原資産の価格変動より小さいのですが、アットザマネーになると変動の半分くらいオプション価格も変動するようになり、インザマネーになると変動がさらに大きくなります。


 デルタが小さいときにオプションを買って、デルタを大きくなると「レバレッジを掛けたのと同じことになる」というわけです。これがデルタの上昇を使ってレバレッジを掛けたのと同じ状態をつくる、という方法です。もちろん相場を当てないと不発に終わりますが、オプションの買いは損失限定ですから大損にはつながりません。


令和2年7月17日

証券アナリスト

松下律