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ブログ:Onevoice

岩本 秀雄 の投稿

増益寿命
疫病退散

 2年ほど前にも当欄で紹介したことのある入谷法昌寺。最近、その境内には祈願の書き文字が掛けられています。仏語にはまったく詳しくなく、あまりにも世俗的な生き方をしている当方、最初は、この「増益」なる言葉に驚きました。「お寺さんまでが増益(ぞうえき)祈願とは…」と。
もちろん、「ぞうえき」と読むのではなく、「ぞうやく」と読むのが正しいのだそうです。「増し、ふやすこと」といった意味があるそうです。広辞苑には「増益法(そうやくほう)」という言葉が載っていて、「密教で、福徳、繁栄など現在の状態を積極的に増進させる修法」と説明がありました。

ですから、「増益寿命」(「寿命増益」との表現もあるようです)という四文字の言葉には、一般的にはあらかじめ決まっているとされる命の時間を何らかの工夫によって延長させよう、つまり寿命を延ばそう、という意味があるのでしょう。21世紀になって、抗生物質の一種には動物の寿命を延ばす効果があることや標高1000メートル以上の高地に住む人は長寿が多く、糖尿病患者は健康人よりも寿命が短い…といったことが研究によって明らかになってきたようです。新型コロナウイルス感染で基礎疾患を持っている人の死亡率が高いことも寿命の長短と大いに関係しているのでしょう。
 
そういえば、しばらく前まで「健康寿命」なる言葉が政府機関を発信元にして盛んに喧伝されていましたが、今回の、コロナ騒動で明らかになった生理的、物理的、そして絶対的な「寿命」という言葉の前で、その何とも薄っぺらで、能天気な言葉の感覚が露わになってしまったような気がします。
 
「増益長寿」には、「疫病退散」が欠かせないこと。経済活動の復活も大事なことですが、人の命も大切。前のめりになっている政治には警戒が必要かもしれません。
 
本日から6月。「水無月」とも「水張月」ともいいますが、いづれにしても雨が多く「水」が欠かせない月。厚生労働省は「熱中症に気をつけよう」と呼び掛けていますし、気象庁は西日本での大雨警戒を唱えています。
日経平均は過去10年間で6勝4敗と、やや勝ち越し。でも、日米ともに「年間の高値をつけやすい月」というジンクスがあります。今年は4月、5月とプラスが続きましたから、6月も増益で…、とは俗っぽい落ちで申し訳ありません。<6月1日>
 先週15日、新型コロナウイルス感染の拡大による営業停止を原因とした名門企業の経営破綻が日米で明らかになりました。米国では、百貨店のJCペニーが連邦破産法11条の適用を裁判所に申請。同じ日、日本では大手アパレルメーカーのレナウンが裁判所から民事再生手続きの開始決定を受けた、と発表しています。

 いずれも突然の話ではなく、ファストファッションの台頭やネット通販の拡大によって事業基盤が揺らぎ、企業体力が疲弊していたところへ今回の新型コロナウイルス感染拡大による販売・小売店の休業によって収入が激減し資金不足に陥った、という決定的な共通要因が挙げられます。

 偶偶のことでしょうが、レナウンとJCペニー。ともに創業が1902年で、118年の歴史を持つ企業ということも共通点として挙げられていいかもしれません。レナウンは創業者の佐々木八十八氏が繊維製品卸・ニット製品製造会社の「佐々木営業部」を大阪に設立。一方、JCペニーもこの年、ジェームズ・キャッシュ・ペニー氏など3人の経営者が第一号店を開店しています。もうすぐ120年の歴史を刻むところだった名門企業が時代の変化に対応できず、ひとつの役目を終えた、ということかもしれません。

 米国では4日に衣料品チェーンのJクルー・グループが、7日には高級百貨店のニーマン・マーカスがやはり11条申請を行いましたし、ギャップやメーシーズにも“危機説”が流れているようです。今回のJCペニーは全米に850店舗を展開し、9万人の従業員を抱えた大手チェーンですから、周辺への影響もばかにできません。

 一方、レナウンは規模でいうと、いまや業界では中堅クラスにすぎませんが、かつては日本最大のアパレルメーカーでした。百貨店のファッション売り場を支配していた最強の企業でした。

「お洒落でシックなレナウン娘が、ワンサカワンサ、ワンサカワンサ。イエーイ、エイ、エイ…」(作詞・作曲は小林亞聖さんだそうです)という(あの!)シルヴィー・バルタンや弘田三枝子さんが歌ったCMソングが懐かしく思い出されます。

筆者も1970年代に兜町の記者となり、レナウンを初めて取材し、当時の社長・Iさんにお会いした際、「アパレル業界(当時はファッション業界という言い方でした)の経営者って、こんなに違うのかぁ…」と興奮したことがありました。まさに、子供のころ親しんだ、あの歌そのもの。身に着けているスーツや立ち居振る舞い、しゃべり方や会話の中身まで含め、(他の業界のトップと違って)経営者然としているわけでなく、それでいて聞き方を飽きさせることがない、駆け出し記者には、「お洒落でシックな…」印象がとても強かったこと、今でも覚えています。でも、そんな経営風土だからこそ、今のレナウンがある、との厳しい見方もありますが…。

山東如意科技集団との関係を含め、同社についてはこの先この間の経緯の掘り起しが進むことでしょう。さらに、三陽商会、オンワードHD、ワールドなどライバル各社もより一層厳しい目で見られるかもしれません。それは財務内容をベースに厳しい選別に進む可能性もあるでしょう。

決算発表が一巡し、今回のコロナ禍による企業業績への影響度合いが次第に見えてきます。個別にはより深刻になる必要があるかもしれません。(いわもと)
 「悲惨」とか、「壊滅的」といった形容が目についた米国4月雇用統計。失業率は14.7%(3月は4.4%)と一気に10%以上も拡大しました。これは第2次世界大戦後で最悪。大恐慌後の不況期、1940年以来の高水準だそうです。就職活動を諦めた人も多く、実際の失業率は「20%近い」との指摘もあります。一方、非農業部門雇用者数は前月比2050万人の減少。こちらも過去最大の減少を記録しました。いうまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済活動が一斉に止まったことによります。2050万人の失業者のうち8割は「一時的な解雇」だそうですから、経済活動が再開されれば、逆に記録的な増加に転じる可能性もあるわけです。

 統計発表後の株価はどうかというと、ダウ平均が455ドル高、NASDAQ総合が141ポイント高と、ともに大幅な上昇で終わっています。この背景について「数字は悪かったけれど、市場予想(ブルームバーグ調べ、16%、2200万人減)ほどは落ちなかった」との解説が多いようですが、これほど悪い数字ですから、14.7%も16%も大した違いではないでしょう。数字がどうだったというよりも、統計数字は市場心理を跡づけしたにすぎず、むしろ数字が具体化したことが心理的なアク抜け感につながったとみるべきでしょう。

 特に、7日に昨年末(8972.6)比プラスに浮上したNASDAQ総合は8日も続伸したことで先週いっぱい5日続伸となりました。この5日続伸というのは今年初めての出来事です。

 明らかに、経済活動再開後の景気回復に対する期待が株価上昇を支えているようです。8日には、米中の3閣僚が電話で会談し、貿易交渉第一段階合意の履行を確認しあった…と米中双方が発表したばかり。一足先に日本株が織り込んだように、貿易摩擦再燃への警戒感後退も好感材料となったようです。

 ところが、不気味な話も並行して伝わってきます。ブルームバーグの報道によると、トランプ大統領はFOXテレビのニュース番組のインタビューを受け、「中国とは、非常に苦しい状況にある」と悲観的な物言いだったそうです。これも単にブラフなのかもしれませんが、突然にトランプ砲が炸裂するかもしれないという警戒感を片付けてしまわないほうがいいようです。また、追加経済対策について「われわれは急がない」とも語っているそうですから、どこかで失望感が広がるかもしれません。

 日本株も今週が正念場。本番を迎える決算発表が焦点になるでしょう。相変わらず「今期は未定」の発表が多いのが実態ですが、それでも経営者の見方などから先行きを類推するしかありません。その意味で、12日の午後に行われるトヨタ自動車の決算と発表記者会見での会社側説明がどうか、その内容が日本株の戻りの強さを決めることになるかもしれません。(いわもと)
 今週は4月から5月へブリッジの週。4月の日経平均は24日現在で3月末に比べて344円高。このままなら4か月ぶりでプラスとなります。3月下旬の急激な切り返しの反動もあって月初めは調整安で始まったものの、4月17日に2万円近いところまで上昇して“コロナショック”からの戻り相場第2波突入を確認。先週はそのスピード調整の週だった、という位置づけでしょうか。ローソク足の月足をみると、上下にヒゲを持つ“気迷い線”となっています。

 それはそうでしょう。欧米各国はロックダウンの解除や経済活動の再開を模索する段階に入っているけど、日本国内では感染拡大が続いて鎮静化には程遠く、来週のゴールデンウィークも“巣籠り”が続きそう。緊急事態宣言による5月6日期限も延長されるのではないか…との観測が強まるほどの状況では、“日本株出遅れ論”にも精彩なし。経済統計は連日、深刻な数字が明らかになり、本番を迎えた企業決算発表は「減額で着地」「今期は未定」「発表は延期」といったものばかり。これでは、まともに投資価値を弾くこともできません。このところジワッと商いが細ってきているのは、投資家の“諦念”みたいなものを反映しているのでしょう。

そういえば、4月は過去19年連続して外国人投資が買い越した月として語られてきましたが、どうやら2020年はその記録が破られることになりそう。

気の早い人は「5月はセルインメイ(5月に売り抜けろ)の月」などというジンクスを持ち出しますが、果たしてどうでしょうか。コロナショックの発生確率は「1600億年に一度」といわれましたが、経験的に稀有な出来事が起こっているわけですから、牧歌的なアノマリーは当てにならない、と考えたほうがよさそうです。

日本政府の施策と同じようにスピード感に欠ける嫌いがあるとはいえ、株価の戻りはここまで順調に推移しているように思われます(ここで大事なのはTOPIXが3月27日の戻り高値(1459)を抜いてくること)。実態材料(景気・企業業績の劇的な落ち込み)を織り込むための二番底(3月19日の安値に接近するけどそこを割り込まない安値)を見にいく、との見方が多数派(悲観派は3月安値では止まらない、と主張するけど、それでは二番底ではなく、二段下げとなってしまう…)のようです。もちろん、それにも一理あるのですが、こうした局面で大事なのはアレコレ言わず、株価が語ることに黙って耳を傾けることだと思います。

誰もが気乗り薄になりがちな巣籠りGWの前の週。アンリツ、京セラ、村田製、日電産、東エレなどの決算発表は行われるけれど全体像は漠としてつかみにくい…。日米欧の金融会合が一斉に開かれるけどかなり織り込まれてしまっている…。WTI原油市況は落ち着いてきたけど今度はシェールの経営が深刻化しそう…。にわかに緊張感を持ってきた北朝鮮情勢…など、モヤモヤがいっぱいの中で、日経平均(TOPIX)が上を向くか、下を探るか、に注意しましょう。その流れが5月相場にも自然と引き継がれていくのではないか、と思っています。さて、どうでしょうか。(いわもと)
 先週17日、米国のバイオ企業、ギリアド・サイエンシズの株価が一時14%上昇し、52週高値を更新しました。開発中の新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」について、有効な結果が得られた、との報道があったためです。医療情報サイト「STAT」に掲載された情報によると、シカゴ大学の治験では「新型コロナ患者125名(うち113名が重症)」に投与したところ、死亡した2名を除く全員が発熱や呼吸器症状が改善。1週間以内に退院した」ということです。「レムデシビル」については現在、患者6000名を対象に、日本を含む各国の研究者が参加した国際的な研究開発体制を組んでいるため、今回のデータもその一環のようです。ギリアドは5月にもデータを公表する模様です。

 17日の米国市場では、ダウ平均が704ドル高と急伸しましたが、この「レムデシビル」の治験進展が心理的に好感された、との解説もありました。STAT情報を受け、ギリアドの株価は米国夜間取引の段階から急上昇していましたから、それが日本株にも波及し、「17日の米国市場は高い」との期待につながりました。ところが、わが国で「アビガン」の開発を進める富士フイルム、ロッシュと組んで「アクテムラ」という抗リウマチ薬を新型コロナウイルスの治療薬として開発を進める中外製薬の株価はギリアドの株価急騰で反落してしまいました。ライバルの好成績は嫌気材料、というわけでしょう。

「アビガン」の一般名は「ファビピラビル」。レムデシビルと似ていますが、この2薬剤、ともにウイルスの遺伝子情報をコピーするRNAポリメラーゼを直接阻害する作用を持ち、レムデシビルがエボラ出血熱の治療薬として開発されたけど、いまだ未承認、アビガンが新型インフルエンザ治療薬として開発されたけどエボラ出血熱にも有効と見られている、そして日米政府が開発を支援している-など、似たような背景を持つ薬剤です。(少なくとも日本の株式市場では…)ライバルとして意識されるのも当然かもしれません。

 では、アビガンは劣勢かというと、そうでもありません。18日、都内で日本感染症学会の緊急シンポジウムが開かれたそうです(NHKニュースが伝えていました)。そこで、藤田医科大学・土井洋平教授からアビガンの治験報告がありました。患者300名を対象にアビガンを投与したところ、「軽症、中等症患者でおおよそ9割、人工呼吸器が必要な重症患者でおおよそ6割に、2週間後に症状の改善が見られた」ということです。悪くない数字です。この材料、本日の相場に効くでしょうか。

 開発競争がテーマになってきたことは、市場が混乱収束期に入ったことを示すもの。株価回復への期待が高まりそうです。(いわもと)