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ブログ:Onevoice

鈴木 一之 の投稿

「困難な問題はすべて、解決が必要な部分へと分割せよ」(デカルト)

丸善・日本橋本店は私の大好きな書店です。週に3回は足を運びます。アマゾンで買うことも多いのですが、大半の本は丸善で購入します。

その丸善の地下1階に大きな文房具売り場があります。この時期、入口付近に特設された手帳コーナーに人々が集まっています。私も行くたびに立ち寄ります。まっさらの何も記入していない手帳には不思議と心が引き込まれますね。

いったいどんな予定が書き込まれてゆくのか。まだ知らない誰と会い、どんな土地へ行くのか。想像を膨らませながら、次々と平積みにされている手帳を手に取ってぱらぱらとページをめくります。それだけのことがただ単純に楽しいです。

ストックボイスの「東京マーケットワイド」のゲストコーナーには毎日、多くの市場関係者の方がゲストとして出演されます。コーナー枠をフルに使うとだいたい12分間くらいの持ち時間になります。

電話出演される方も含めて、おそらくすべての方がまちがいなく「12分の枠で何をお話ししようか」と熟考されていることでしょう。逆の立場だったら私もそうします。おかげさまでいつもたいへん勉強になっております。

そしてまたゲストの方々はこの時期、12分枠のための熟考だけでなく、2020年を通した年間の見通しを立てていることでしょう。カレンダーを見ながら重要な国際会議、経済統計の発表日、選挙を含めた政治日程などを確めて、月間騰落率の習性や景気動向の季節的な波を考慮しながら、企業収益の伸び率、および日経平均、ドル円相場の目安を固めてゆきます。

その際にカレンダーや手帳は欠かせません。時間の経過が重要な要素となることも多いのです。世の中は進歩しすぎてわかりにくい応用問題ばかりが積み上げられていますが、デカルトのように難問でもわかりやすい部分、先に解決すべき部分に分割してゆけば答えにたどりつきやすくなります。

まもなく2020年が始まります。今年を無事に締めくくって、晴れやかに令和2年を迎えたいものです。
(スズカズ)
「人は、昼と同じく、夜を必要としないだろうか。」(ゲーテ)

株式に限らず相場というものは、過去の記憶によって成り立っています。企業の内部に蓄積された過去の膨大な記憶や経験に基づいて、未来が形づくられてゆきます。相場は記憶のゲームでもあります。

学業を終えて社会に出て、仕事に就いて36年が過ぎました。証券会社に入社して、数えきれないほどの株式の売買や投資信託にかかわる法務、実務を覚えていきました。それらの知識は私の血となり肉となり、現在に至るまで日常の細々したルーティンワークを支えてくれます。

自分で考えたり、手引書やマニュアルから学んだことも多いのですが、今でも私自身の日々の活動を支えてくれるモノの見方・考え方のほとんどは会社の先輩たちから口頭で教わったことです。

証券会社は忙しい職場ですから、手取り足取り教えてくれるということはほとんどありません。ぶっきらぼうというか、突き放されて自分で考えて処理することが当たり前です。みんな自分の業務を完遂することで手いっぱいです。

それでもこちらが行き詰って、にっちもさっちも行かなくなっていると、本当にごくまれに先輩たちが手を差し伸べてくれることがあります。日ごろの態度が厳しいだけに、これが実にうれしく身に沁みます。

時には経験に基づいた相場の見方なども教えてくれます。数あるアドバイスの中でも今でも私の支えとなっているのが、冒頭に記した「相場は記憶のゲームである」と、「株価は夜つくられる」というふたつの教えです。

株価は夜のうちにつくられます。昼間の立ち合い時間は実際に売買が執行され、売りたい人と買いたい人の取引が付け合わされるだけです。行動よりも前に考えが大事、ということですね。

先輩がたはみなさん、もう定年退職されているはずです。どこかで「東京マーケットワイド」を見てくださっているかもしれません。その節は本当にお世話になりました。生意気な後輩でしたが、いまもこうして教えていただいたことを忘れておりません。ありがとうございました。
(スズカズ)

「無責任とは良心の欠如ではなく、自らの判断を変えないことに固執する姿勢である。」
(エマニュエル・カント)

株式投資ではしばしば先行きの見通しを間違えます。トランプ政権が誕生して丸3年が過ぎましたが、この3年間の米国経済の好調ぶりとNY株式市場の空前絶後の上昇を当初から見通せた人は非常に限られています。

NY市場の上昇をみごとに当てた人はまったく存在しないわけではありませんが、きわめて少数派であることは間違いありません。現在の地球上でもっとも社会的、経済的な格差の存在する米国において、上位層の数%に属するような人々がいかにトランプ大統領とその政策スタッフに期待を寄せていたか、今になってようやくわかりました。誠におそまつさまでした。

私自身、1年を通して相場の見通しが当たったことがほとんどありません。というよりも、相場の先行きを当てるということは最初からあまり情熱を注いではおりません。それよりもいま、目の前で起きている世の中の出来事を可能な限り正しく把握することの方に力を注いでいます。予想ではなく、観察です。

私の先行き見通しが当たらないことを言い訳がましく弁明しているわけではありません。「いま起きていることを正確に把握する」ということは、実際にやってみると想像以上にむずかしいものです。本心を述べれば、将来の見通しを立てるよりも「いま」を把握することの方がむずかしいのではないかと考えております。

「いま」とは何か。いまこの瞬間に起きていることは、半径2メートルくらいのことしか目や耳には知覚できません。世界中で起きていることを知るには何か別の方法、メディアの報道なり、ネット上のデータなり、自分以外の外部のルートに頼らなければなりません。

その外部からの情報が不正確であったり、バイアスがかかっていたりすることが多いのです。全世界で起こっていることを時々刻々、リアルタイムで把握することも不可能です。「いま」起こっていることを正確に判断するのは、それほどたやすいものではないのです。

さらに「いま」という瞬間は、光の速度ですぐに過去に変わってしまいます。地球は太陽の周囲を猛烈なスピードで公転しているのですが、慣性の法則によって私たちはそのスピードを体感することはありません。

「いま」この瞬間が光速で連続するような現代社会において、過去と未来が一瞬だけ「いま」というごく短い時間に出会います。その瞬間をできるだけ正確に把握すること、それを続けてゆくこと、そうすることで株式投資が成り立つのだと私自身は考えています。

冒頭のカントの言葉が示しているように、先行きの見通しに対して「自らの判断を変えないことに固執する」などということは、私の立場からすればあり得ません。世の中に対して謙虚に生きようとするのであれば、一度下した判断でもどんどん変えてゆくべきだと思います。当たりはずれは、時の運です。
(スズカズ)


3月決算企業の決算発表も終盤に差しかかりました。今週末にはほぼすべての企業の中間決算が出そろいます。

11月は年間を通じて企業業績の変更、修正が最も多い月です。会計年度のちょうど折り返し地点を過ぎたところなので、年度のはじめに立てた収益計画の見直しを行う企業が多いのでしょう。想定どおりに事業活動が進んでいる企業もあれば、想定線に届かないところもあります。

トランプ大統領が登場してはや3年。どの企業も年度スタートの事業計画は株主から文句の出ない範囲でギリギリ低めに見積もってくるようになりました。特に今年度は貿易紛争の影響で、中国の経済状況がかなりひどいことになる、という前提で年度の予算が組まれています。

そのために中間決算の実績数字がかなり悪い内容になったとしても、それが正式に発表されてしまえば株価の下押し圧力はそれほど強くありません。むしろここから先は業績の回復が待たれるとばかりに、悪い内容の決算が発表されたのをきっかけに株価が急速に値上がりする企業がかなりの数にのぼっています。

投資家が面食らうのはこのあたりのニュアンスです。ネット証券のサービスや「会社四季報オンライン」が充実してきたことで、業績を分析するデータやツールはネット上に無数に存在します。それらを使えば好調な増益基調の銘柄を探すのはさほどむずかしいことではありません。

むしろむずかしいのは、減益企業の中から底値圏にある企業を探し出すことです。「バリュー株」と言ってしまえばそれまでですが、マーケットは減益決算の公表で株価が下落する段階から、減益発表を機に株価が上昇する段階へと着実にステージは移っています。

変化と言えばもうひとつ、上場企業の形が大きく変わりつつあることです。ホンダ系の部品メーカー3社(ケーヒン、ショーワ、日信工業)の経営統合や、まだ構想の段階ですが東芝系の上場企業(西芝電機、東芝プラントシステム、東芝テック、ニューフレアテクノロジー)の統合など、上場するグループ企業の数を減らすという方向に一斉に動き出しています。

グループの形はそのままでも、秩序というべきか在りようというべきか、長年にわたって積み重ねてきたものをいったんやり直そうという機運が高まりつつあるように感じます。世の中がガラガラと音を立てて変化しつつあります。

時の流れが加速しているように感じられるほど目まぐるしい変化ですが、なんとかついてゆきたいものです。その先にあるなにかをぜひともこの目で目撃したいと願っています。
(スズカズ)
中国で10月末に4中全会(第19期中央委員会第4回全体会議)が開催されました。「共産党の権威と集中的な統一指導」が前面に打ち出され、管理体制の強化が改めて示しされましたが、それらとともに科学技術に関して、あらためて挙国体制を固めることが採択されました。

2015年に打ち出されたハイテク産業の育成策である「中国製造2025」に代わって、国内の研究機関や企業に蓄積された技術を結集して、半導体などの研究開発を進める方向性が強化されるとみられます。

4中全会と前後して、トランプ大統領からは米中貿易交渉に対して融和的なスタンスが打ち出されました。それを好感してNYダウはS&P500に少し遅れて史上最高値を更新しました。両者の関連は本当は何もないのかもしれませんが、時系列的に記述すればそうなります。

米国だけではありません。ドイツのDAX指数は昨年5月以来の高値、フランスのCAC40は12年ぶりの高値となっています。イタリア、ブラジル、ロシアも高値に進み、日経平均も昨日は23,000円の大台を突破しました。世界の政治と経済はどの国も越えがたい問題を山ほど抱えていますが、今のところ微妙な均衡のもとに世界同時株高の様相を強めています。

中国の意思決定はいつの時代も秘密のベールに包まれています。表面的に伝わってくることと真の狙いの在りかはずいぶんとかけ離れていることが多いものです。その辺の検証はかなり時間が経ってからでないとできないものですが、4中全会で盛り込まれた決議事項に「ビッグデータやAIの活用」の一項目がありました。AIを活用して社会の管理態勢の強化と新しい制度、規則の構築を行ってゆくそうです。

AIによる管理社会なんて、なんとも恐ろしいですね。ジョージ・オーウェルの「1984」がすぐに思い浮かびます。そこではビッグ・ブラザーに支配された監視社会、町中にテレビカメラとマイクが仕掛けられ、人々のほとんどすべての行動は政府当局によって監視されています。自由な意思表示も許されません。

AIに関するニュースを耳にしない日はありません。本日(11月6日)の日本経済新聞には、大学受験の名門予備校、駿河台予備校と河合塾がAIを導入して難関校の入試対策に利用すると報じていました。

設問を作る側の大学がAIを使って入試問題を出し、それに回答する側の受験生もAIによって指導を受けて合格を目指すという。ますます画一的で個体差のない入試が実現することになるのでしょうか。レベルはぐんと違っていますが、AI運用、AI投資が普及すればするほど、全体主義的な国家像とさほど変わりばえしない、均質的な世の中が形作られてゆくような気がします。
(スズカズ)