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ブログ:Onevoice

鈴木 一之 の投稿

2018年のクリスマスまであとわずか。1年で最も街が輝く季節ですね。平成30年。リーマン・ショックから10年。梅雨明けが異常に早かった、観測史上最も暑い夏。区切りの年にふさわしく今年はさまざまな形容詞で語られる年となりそうです。

そして世界は大きな曲がり角を迎えた年であることも確かです。

フランスで歴史的な決断がなされました。マクロン大統領はフランス国民向けにテレビ演説を行い、最低賃金の8%引き上げ、年金生活者への増税廃止、残業手当・年末手当の非課税化、など一連の生活支援策を明らかにしました。

フランス全土を揺るがせた「黄色いベスト」運動は4週目を迎え、週末の大規模なデモはフランス全土で拡大の一途をたどっています。暴徒と化してシャンゼリゼ通りを破壊する集団が大問題となりましたが、それはごく一部の活動家に過ぎません。「黄色いベスト」運動を突き動かしているのは、社会のごく普通の平均的なフランス人です。自営業、中間層、年金生活者など、社会の根底を支える広い層です。

これらの階層の人々が、マクロン大統領の進める社会構造改革に対して息苦しさを感じ、それが一斉に噴出している様子が伝わってきます。

2017年のフランス大統領選で、極右の国民戦線マリーヌ・ルペン党首、極左のメランション候補を破って当選したマクロン政権は、厳密な財政緊縮策に基づいて構造改革を進めてきました。その厳しい改革スタンスが英国離脱のあとで、「崩壊の危機」にさらされたEUに秩序と規律を取り戻しています。財政規律の厳格さで知られるドイツ以上に、今ではEUの盟主としてフランスの地位を高めるに貢献しています。

しかしその裏側で民衆の不満がうっ積しています。燃料税引き上げの凍結から始まったように見えた「黄色いベスト」運動は、それよりもさらに幅広く、根強く社会の隅々で支持をかち得ました。フランス革命、五月革命、歴史的にもフランス国民の怒りが爆発する時は、世界に先んじて大きなうねりとなって押し寄せます。

欧州では極右と極左が連立政権を組むイタリアを筆頭に、スペイン、ハンガリー、オーストリア、そしてついにドイツでも、ポピュリズムや極右勢力がじわじわ力を増しています。フランスが欧州で唯一の民主主義の防波堤になるのか。その改革の手腕が問われていましたが、ここに来て若干の軌道修正を余儀なくされたのです。

リーマン・ショックから10年。いまだに先進国社会はその後遺症にさいなまれています。いずれの国も非常時の財政政策と金融政策で傷口をふさいできましたが、その痛み止めの神通力もどうやら効力が切れつつあります。「史上最長、戦後最長の景気拡大」はまるで蜃気楼のようにはかないものです。

大衆迎合的な政策に支えられた米国・トランプ政権の株高政策が途切れたとき、果たして次の一手は誰が打てるのでしょうか。中国の経済が浮上すれば先進国すべて救われる部分は大きいのですが、その中国が米国によって苦しめられています。

フランスの劇的な政策転換は、2019年の先進国の政治・経済に対して、重い示唆となっているように思えてなりません。
(スズカズ)


12月になりました。今日を含めてあと4回、水曜日の朝に本稿をネット上にアップロードすると今年が改まります。「平成最後の~」という形容詞をたくさん見かけるようになり、そのたびに平成の世が幕を閉じるという現実にただただ、さびしさを感じてしまいます。

その平成30年も終盤を迎えて、株価が波乱の様相を見せ始めています。市場参加者の誰もが世界景気の後退を心配しているところがやっかいです。ほんの1週間前、米国のクリスマス商戦の幕開けを飾る「ブラックフライデー」が好調だったと喜んでいたのもつかの間。株価の本質部分が再び揺らぎ始めました。

今年読んだ本で最も印象に残っているのが、トーマス・フリードマンの「遅刻してくれて、ありがとう」です。ピューリッツァー賞を3度受賞した現代随一のジャーナリストが、猛烈なスピードで進化する現在という時代を文章で描いてみせ、人類の行く手に待ち受ける数々の問題を示しています。以前、この欄にもご紹介したかと記憶しています。

フリードマンの考察によれば、現代社会は3つの大きな変化に直面しています。その3つとは、

(1)気候変動
(2)グローバリゼーション
(3)テクノロジー

です。西側先進国を覆い尽くしている保守主義、ポピュリズムの猛威は、その根本原因を探ると難民問題に行き着きます。流入する一方の難民に対抗し地域や国を守るために極右思想がはびこります。その難民の発生もさらに根源をたどれば、気候変動による異常な高温、旱ばつ、洪水、海岸線の侵食にたどりつきます。

トランプ政権は大衆の中から生まれるべくして生まれたもので、仮に2年後の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が敗北したとしても、代わって別の「トランプ氏」が登場するだけです。英国はここからいくど国民投票を実施しても、2年前と同じようにEU離脱を選択することになります。気候変動を直視して根本から向き合わない限り大きな変化は訪れません。

そしてグローバリゼーション。いまや世界は電子のスピードでつながっており、世界のどこかで起きた現象は瞬時にして全世界に広がります。中国やロシアに何かあれば、それは世界経済を一瞬にして動かします。そこにはスマホを中心にテクノロジーの進化が大きく関わっています。

10月にIMFが世界経済の先行きに対してこれまでの見通しを引き下げました。11月には同じようにOECDが世界経済のアウトルックを下方修正しました。そして12月、景気鈍化への不安が米国の株式市場を揺さぶっています。

世界はほぼリアルタイムで同一方向に動いています。かつてないほどにそのシンクロ性は高まっています。その様子をフリードマンの「遅刻してくれて、ありがとう」が教えてくれました。
(スズカズ)

G20を舞台とした米中首脳会談まで秒読み段階となりました。日本の株式市場はこの2週間、息をひそめてその帰趨を見守っています。NY株式市場もわずか1日のうちに、前向きシナリオの「和解」と悲観シナリオの「決裂」の両方のケースを織り込むという、神経質このうえないほどの極端な値動きを見せています。

史上空前の投票率を示した米国の中間選挙が終わって、はや3週間が過ぎました。最近は時の経過が非常に早く感じられます。この間、米中関係の動きはほとんどありませんでした。しかし表立った展開はなくとも、政財官界は中間選挙の分析が急ピッチで進められています。

はっきりしていることは米国の有権者はトランプ政権のこれまでの2年間に対して、明確に「ノー」の意思表示を示したという点です。共和党は上院での過半数を維持しましたが地盤とする保守州で苦戦しており、下院は民主党が奪取しました。このままの獲得議席数を2年後の大統領選に当てはめれば、民主党の勝利も見えてきたとされます。

トランプ政権は今後の議会運営において、予算編成は苦労することになります。12月には早くも債務延長問題で議会がさっそく紛糾する可能性があり、それだけに大統領に権限が集まっている通商、貿易、外交問題に力をそそぐことになりそうです。

岩盤の支持層であるラストベルト地帯の白人労働者に向けて、「アメリカ・ファースト主義」、製造業支援策をより一層強く打ち出してくることが容易に予想されます。日本に対する風当たりはこれまで以上に厳しくなり、それを覚悟して日本のメーカー各社は設備投資を凍結して身構えている様子がうかがえます。

幸いにも米国の経済は絶好調です。トランプ減税の恩恵が個人・法人に広く及んでいると見られます。このままの調子で2年後の大統領選まで持ちこたえられればよいのですが、減税による経済の刺激効果はここから徐々にペースダウンしてゆきます。

ケント・カルダー氏(東アジア経済研究センター所長)は、トランプ大統領はここから米国経済が落ち込むとすれば、それは下院および予算を牛耳ることになった民主党のせいにしたいはずだと考えています。そこで米国経済に対する中国への関税引き上げの悪影響を打ち消す意味で、ある種の貿易協定を中国との間で締結する可能性が高い、と見ています。だとしたら、G20が大きな転機になりそうです。

ただしそれはあくまで短期的な解決策でしかないとカルダー氏も見ており、より長期的な視野に立てば、米国と中国との間での覇権争いはここから激化することになります。2年後の今ごろ、東京オリパラは無事に閉幕しているはずですが、私たちはどのような政治的風景を見ているのでしょう。
(スズカズ)


日産自動車のカルロス・ゴーン会長が突然、社会の表舞台から去りました。金融商品取引法違反だそうです。あまりに突然の出来事で今の事態を明確に言い表す言葉が見つかりません。

世の中もいまだに半信半疑という状態ではないでしょうか。雰囲気だけで言えばそう感じられます。国内外の政界・財界もほとんど明確なリアクションを示しておらず、とりわけ日本の産業界はほとんど言葉を失ったままです。

カルロス・ゴーン氏は日本で最も知名度の高い外国人でした。世界のビジネス界の頂点に君臨する自動車業界にあって、瀕死の重傷に遭遇した日産自動車を劇的なスピードで建て直した立役者であり、そればかりか世界有数の企業グループを束ねる数少ない経営者のひとりでした。

ゴーン氏の登場した時期の日本経済はどん底にありました。バブル崩壊から10年近くが過ぎ、不良債権問題は政官財がそろってその存在すら認めず、「過剰3兄弟」(過剰雇用、過剰設備、過剰債務)でがんじがらめに縛られ、身動きもとれない窒息状態にありました。

バブルの本質は行き過ぎた地価の値上がりですが、中でも飛びぬけて上昇したのが「東京の地価」です。この東京の地価の異常な値上がりを最後の最後まで演出したのが関西系金融資本です。

関東を地盤とする金融機関は、地元企業や住民とのつながりが深いお膝元だけに土地勘や適正水準の意識もあって、バブル末期の最後の最後、最も激しい上昇局面では融資活動はほとんど追いつけませんでした。関西系金融機関だけが暗躍していたという印象です。

その関東系金融機関の代表格が、旧・安田財閥を発祥とする芙蓉グループです。上場企業群で言えば、富士銀行、山一證券、安田信託銀行、丸紅、NKK、大成建設、そして日産自動車です。家柄がよく品があってやっかみ半分から「お公家集団」とも揶揄されたほどですが、戦前戦後の日本経済において堅固なグループ力を誇っていました。

しかし品のよさは時代の激変期にはかえって仇になり、1997年に山一證券が自主廃業を余儀なくされ、安田信託、丸紅、NKKも株式市場で徹底的に叩かれました。これらの企業群には経営不安説が繰り返し流れされました。

そして日産自動車です。「銀座の通産省」と言われるほど硬直化した社風でしたが、「シルビア」と「スカイライン」で若者の心をつかみ、伝統と革新に惹かれて優秀な人材が集まりました。バブル期の象徴ともされる「シーマ」と「セフィーロ」というヒット車をふたつも生み出し、ここで栄華の頂点を極めました。そこからの転落です。

そんな日産自動車に単身乗り込んだのがカルロス・ゴーン氏です。ゴーン氏が救ったのは日産だけではありません。芙蓉グループを救い、そして日本経済そのものに復活の指針を与えたのです。希代まれなる経営者のあまりに突然の退出は、ただたださびしい限りです。日本は再び転機を迎えました。日本経済は突如として大きな転換点に遭遇しているのだと感じます。
(スズカズ)
競馬、百人一首、ポーカーはよく似ています。これらはすべて記憶のゲームです。

株式投資も「記憶のゲーム」そのものです。株価の未来を見通すには過去を知らなければなりません。統計的な手法が多用されるのはそのためですが、統計だけでは判明しない部分も記憶として残しておかなければなりません。

株式やその企業に関わる部分の何を、どこまで記憶するのかは個人の嗜好によります。株価の推移は最も一般的ですが、過去の収益動向や世界経済との関連、地域社会とのかかわり、経営陣の経歴、取引先、成功した(成功しなかった)新製品開発、その企業の株式の保有状況などです。

果てしなく根気のいる作業で、すべてを完璧に追求することはおそらく当該企業の社長にもできません。あんがい古参の総務部長あたりがパーフェクトな記憶の持ち主だったりするのですが、いずれにしろ記憶の追求に関してはどこかで妥協するしかありません。

もちろん、そこまで小難しいことを考えずに株式に投資することもできます。こうするとおもしろさがぐんと増すというだけのことです。

最近、私自身が意識しているのは企業の創立年月です。社長の年齢も非常に気になります。今さらあらためて指摘するまでもないことですが、設立から日の浅い若い企業と、それを率いる若い社長の活躍の場が急激に広がっています。それは今の社会そのものに、20世紀と21世紀が入り混じった状態が続いているためでしょうね。

日曜日、11月11日は「独身の日」と「ポッキーの日」で賑わいました。同時に第一次世界大戦の終結から100年目の記念日でもありました。戦火に焼け尽くされた欧州では、各国首脳が一同に会して大々的に式典が催され、たくさんのポピーの花が揺れていました。20世紀の記憶はそこかしこに残っています。

そうは言っても株式投資を行う上では、21世紀的な世の中にマッチする企業を選ぶべきです。それにはやはり21世紀になってから誕生した企業がふさわしいと思います。昨日は日経平均が一時▲800円近く下落しましたが、21世紀的な企業はあまり下落の圧力を受けていなかったように見えました。

売られやすいのは20世紀的な企業です。その周辺に収益の改善度が鈍い企業が目立ちます。生産性は上がらずROEも低いため、配当金の増額もさほど期待できません。そのようなケースが増えてきました。

私自身、紙の新聞を読み、スケジュールは手帳で管理して、列車の手配はみどりの窓口に並ぶクチです。肉バルよりも赤ちょうちんの方が好きで、暮らしぶりは20世紀をたっぷり引きずっているのですが、興味の沸く企業はことごとく21世紀に設立された企業です。過去の記憶があまり通用しない世界になってきたように感じる毎日です。
(スズカズ)