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松下 律 の投稿

ただし、行って来い的な・・

 EUの交渉担当者が、「英国と17日に新たな離脱協定案に合意した」と、トゥスクEU大統領に宛てた手紙に明記した、とのニュースが伝わった昨夕、外国為替市場では大幅なポンド高、株式市場では株高、が起きたのですが、ほんの数十分でほとんどもとの木阿弥状態になってしまいました。


 「担当者同士が合意」と言いましても、英国であれば議会での議決など、EU側も当然然るべき手続きが今後必要でしょうから、まだ最終解決ではなかろう、という点と、そもそも「合意無きブレグジット」の相場に対する影響力がもうかなり落ちていた、ということが背景にあったのだろうと思います。


 今週の日本株は総じて堅調な推移だったわけですが、先週の金曜日以降の出来事で「もっとも喜ばしかったこと(買い方から見て、ですが)」は?と問われれば、(私なら)「アップル株の2年ぶりの史上最高値示現」だった、ということで、やはりアメリカ株式市場の出来事が重要なのか、と・・・


 とはいえ、日本でも、業績下方修正でも株価上昇という銘柄がいくつも出ていましたし、村田製作所のトップが電子部品の受注が上向く見通しとの見解を示して、同社株が上昇といったことも起きています。


 売り方の買戻しを誘う動きがまだ続きそうな気配ではあります。


 その時々の日経平均の「妥当値」というものを想定した場合、想定すべき「幅」はおそらく1000円以上あるでしょう。今、日経平均は2万2500円辺りまで戻って来ているわけですから、あと500円位上がればもう日経平均2万4千円レベルに達したも同然と言えるわけで、8月の安値を買った買い方からすれば、そろそろ「満足すべき上昇幅達成」と思うべき段階なのかもしれません。


 とはいえ、いろいろ懸念材料はあるにせよ、来年以降の企業業績向上を先取りする形で、日経平均が昨年高値の2万4448円をクリアしないものか、と買い方が期待するのは別に欲張りではなさそうな気もします。


 懸念材料の内、米中貿易摩擦、ブレグジット、半導体不況、などはひと段落、あとは月末のFRB金融政策、というところなのかな、と思ったりします。FRBは「金融緩和」とは別の策として、短期金融市場への資金供給を増やし始めていますし、欧州中銀も含めてここからは金融緩和策を進めて行くのではないか、ということで、買い方からすれば、出て来る好材料のネタはまだなくなっていない、という感覚かもしれません。


日本株のPERが上昇する条件

 先月9月末時点の世界の株式市場のPER、PBR、は以下のようになっているとのことです。


        PER(倍)  PBR(倍)

・全世界    16.6     2.3

・先進国    17.1     2.4

・米国     20.3     3.5

・日本     12.1     1.2

・中国     13.7     1.6

・ドイツ    12.0     1.2

・韓国      8.2                0.9


 ドイツ、韓国と並んで、製造業の強い国である日本のPER、PBRは低位、ということが言えるかもしれませんが、日本株の低PERはやはり目立つと思います。


 PBRも低いのですが、PERが高くなれば同じROEでもPBRは高くなりますから、日本株のPERがせめて全世界平均並みになれば、日本株の上値余地が拡大するという道理です。


 次のようなふたつの銘柄を考えてみます。


1.一株当たり利益が現在100円で、将来ずっと100円のまま、という銘柄。


2.一株当たり利益が現在100円で、5年後に200円になり、その後はずっと200円のままとなることが確定している、という銘柄。


 1.の銘柄の株価がどの程度のPERで買われるものか、分からないのですが、仮にこの株のPERは10倍だとします。つまり、株価1000円ということになります。


 さて、1.の株が、PER10倍で買われるとしたら、2.の株は現時点でPERいくら位に買われるでしょうか?


 2.の銘柄は、5年目以降は一株当たり利益が200円でそのまま、という仮定ですので、5年後の時点で、今の1.の銘柄と同じく、PER10倍に買われると見ていいでしょう。つまり、株価は2000円、です。


 2.の銘柄は、5年後に一株当たり利益が200円になる、と「現時点で確定している」わけですから、株価は現時点で5年後の一株当たり利益200円を「織り込むはず」と考えられます。つまり、2.の銘柄の株価は、現時点で2000円になるはずです。としますと、2.の銘柄の現時点のPERは20倍になるはずです。


 単純化した話ではありますが、個々の銘柄の株価のPERは、「それぞれの銘柄の将来の一株当たり利益」を織り込む形で形成されると考えることができます。つまり、「PERは一株当たり利益の成長性を反映して決まるはず」ということです。


 日本株のPERを引き上げたい、というのであれば、日本企業の利益成長性を「市場参加者に織り込んでもらえばいい」ということになります。


 この場合、実際に利益が成長するかどうか、ではなく、(利益が成長すると市場参加者が信じて、でも何でもいいので)、とにかく株を買うかどうか、が重要だ、というところがミソです。


 さて、それはどうすれば達成されるか?


 ひとつは、企業が「利益成長を目指して行動し」そのことについて「市場に対して語る」ことです。IR活動と言い換えてもいいかもしれません。ほらを吹いてはいけませんが、利益成長を目指すことは企業への期待のひとつです。


 もうひとつは、「株式の需給を改善すること」です。自社株買いを積極的に実行するといった手段を使って、ということでしょうか。需給のよい銘柄は株価が高くなる、というのはふつうのことです。


 日本企業は過去10年ほどの間に、努力を重ねてROEを向上させて来ました。ROEについては、ここからさらに10%超の水準を目指してほしいものだと思いますが、すでに達成した市場平均で7~8%のROE水準は、過去に比べれば信じられない位良好な水準です。


 ここから、日本企業の「成長イメージ」が好転して行くなら、PER上昇→株価上昇、という循環を期待することができなくもない、という気がします。


令和元年10月18日

証券アナリスト

松下律

売り方、買い方、どちらに?

 ニュースとイベントによって相場が振らされる展開が続いていますが、まだ形勢がどちらに傾くか分からない状況です。


 ソフトデータ、ハードデータ、イベントと、今後どんなものが出て来て、それらにどう反応するか?注目です。売り方が期待する動き、買い方が期待する動き、双方を考えますと以下のようになっていると思います。


売り方が期待する動き:

1.米景気(≒グローバル景気)の動向:今年起きた米長短金の逆転現象から見て、米国で来年4-6月期辺りから「景気後退」が起きる恐れがある。⇒当然、株式相場も先行き下落するはず。⇒日本株も警戒が必要。


2.日本企業の業績動向:2週間ほど後から、第2四半期決算の発表が始まる。減益傾向がはっきりするはずで、株価にはマイナスに違いない。⇒業績発表を受けて、株価が非連続的に下落することはよくあること。


3.株式需給:海外勢の売り越し基調は継続しており、株式相場の下押し要因という状況に変わりはない。


4.地政学リスク等:香港のデモが第二の天安門事件を引き起こす恐れがある。その他、朝鮮半島情勢にせよ、中東情勢にせよ、ブレグジットの行方にせよ、ブラックスワンに等しい悪材料になりかねない。


5.米中摩擦:これからさらに激しくなるに違いない。当然、株価には逆風。


買い方が期待する動き:

1.米景気(≒グローバル景気)の動向:確かに長短金利は逆転したが、以前と違って、超低金利下で起きたことであり、景気後退につながるかどうか、分からない。しかも、株価が先行きを織り込んでいるとすれば、米景気が仮に景気後退期に入ったとしても、それを合図に株価が上昇し始める可能性もある。それに、仮に米景気がリセッション入りするとしても、リセッション入り直前に株価が当面のピークをつける、という動きだってあるかもしれないでしょう。


2.日本企業の業績動向:2週間ほど後から、第2四半期決算の発表が始まる。減益傾向はその通りであろうが、半導体関連が典型で、むしろ減益を確認して、ここからの回復を株価が織り込む展開になる可能性がある。


3.株式需給:海外勢の売り越し基調が継続しているからこそ、投機筋の売りポジションが膨らんだのであり、むしろ買戻しの勢力の方が強い可能性がある。実際、8月下旬からの動きはそうでしたよね。


4.地政学リスク等:香港で第二の天安門事件が起きる恐れがある。その他、朝鮮半島情勢にせよ、中東情勢にせよ、ブレグジットの行方にせよ、ブラックスワンに等しい悪材料になりかねない。それはその通りなのであるが、要するに織り込んでいるでしょう、すでに、と見ることもできるのでは?香港もこれから深セン地域が役割を代替して行くとすれば、いつの間にかうやむやになる可能性もあるでしょう。どこかで大手銀行が破たん、ということさえなければ、案外大丈夫では。


5.米中摩擦:これからさらに激しくなるかもしれないが、案外実務的・段階的に落ち着きどころを探す動きになる可能性もあるでしょう。関税はあればあったで、時間が経てばそれがふつうになるだけ、という面もあるでしょう。


 データに基づき予想・シナリオを想定して、取るべきリスクの量を定めてポジションを取る、というのが投資・投機というものですが・・・


 現局面で・・・


 どうしますか、あなたなら


資本コスト

 あまり現実的でないかもしれませんが、あなたは銀行から株式投資とかトレーディングのための資金を、年利2%で望むだけの額、借りることができるとします。


 そこで、銀行から資金を借りて、その資金を使って株式トレーディングをするとします。


 さて、その場合、「価値創造」につながるトレーディングを達成する、とは、具体的にどの程度の年間利益をあげることを指しているでしょうか?


 答えは簡単です。


 「税引きで、年2%を上回る利益」をあげ続けられれば、それは「価値創造」をした、ということになります。


 逆に、税引きで年2%を上回る利益をあげられなければ、それは「価値破壊」をしたことになります。(つまり、やらなければよかった、と悔やむことになります。借金は返済しなければなりませんので。)


 「株式投資家(特に機関投資家)は、企業経営者に対して、『価値創造』を求める」という言い方がされることがよくあります。


 さきほどの、借り入れをして儲けを目指す個人と同じで、この場合の価値創造とは、経営者が「ある程度以上の利益をあげる」ということを指しています。


 具体的には、利益=ROE(自己資本利益率)、であり、ある程度以上の利益=資本コストを上回る利益率、ということになります。


 銀行からの「借り入れ金利」であれば、分かりやすいのですが、この「資本コスト」という概念がなかなかに分かりにくいものです。しかし、おおむね「株主がその企業の事業リスクを勘案して要求する、株式投資の年間収益率」といった感じの数字です。


 こう書いてもまだよく分からないのですが、機関投資家に対するアンケートによりますと、「だいたい、年7%くらい」とのことです。


 企業経営者が年7%を上回る株式収益率を達成し続ければ、その経営者は「価値創造した経営者」として、投資家から評価される、ということです。


 さて、現状の日本株の、投資尺度面からの「評価」を見てみますと、


・市場平均PBR=おおむね1倍強

・市場平均PER=おおむね12倍くらい


です。


 PBR=ROExPER


ですから、計算しますと、ROEは、だいたい7~8%ということになります。


 現状の日本企業のROEは、ぎりぎりで機関投資家が求める「資本コスト」をクリアしているようだ、ということです。


 この平均像をもとに考えてみます。


 ある会社が、ROE=4%しか達成できていなくて、近い将来向上するみこみもない(と市場で見られている)とします。


 としますと、


 PBR=ROExPER=4%x12倍=0.48


 PBR0,5倍くらいに株価が「放置」されても致し方ない、ということになります。


 日本企業のROEが平均で7、8%水準をクリアし続けられそうになって来た、ということは驚くほどの進化だ、と私は思うのですが、あと一歩のROEが向上が(日本株のいっそうの株価上昇には)必要なのでしょう。


 そのために、自社株買いのいっそうの増加(⇒分母が減ることによるROEの向上、株式需給の改善)が望まれる、という気がします。


2019年10月11日

証券アナリスト

松下律

反落の後は?

松下 律

2019/10/04 08:30

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昨年のこともありますので・・

 ISM製造業景況指数の2か月連続50割れ、9月のISM非製造業景況指数の予想以下の結果(予想55.0、結果52.6)といった「米景気悪化」を嫌気して株が売られる、という一週間でした。


 ISM製造業景況指数の2か月連続50割れは確かに悪い数字なのでしょうが、米経済における製造業のウェイトを考えれば、それほど深刻ではないのでは、という気はします。製造業の景況悪化⇒レイオフなど⇒雇用減少⇒個人消費鈍化⇒米経済全体が悪化⇒株価下落、となるのかもしれませんが・・


 ISM非製造業景況指数は、予想より悪かったとはいえ、50を上回っているわけですし、米国景気が決定的に悪くなっているとは言えないように思います。(昨夜のNYダウも結局引けではプラスでしたし・・)


 代表的なグローバル景気敏感である半導体関連銘柄の株価推移を見ますと、今の局面は最悪期を脱して回復に向かい始めている、という雰囲気です。半導体関連銘柄の株を買う市場参加者が間違っているのかもしれませんが、株価の先見性からしますと、米景気の悪化懸念を反映したのが、昨年末に向けての株価下落だった、と考える方がよさそうな気もします。


 しかし、今晩の米雇用統計の結果も大いに注目されることとなったでしょう。(9月の非農業部門雇用者数増減、予想は14.5万人増加です。今の情勢ですと、買い方からすれば懸念、売り方からすれば期待といったところでしょうか。)


 振り返りますと、8月下旬から9月中旬までに、日経平均はおよそ2000円の上昇を記録していましたから、1000円規模の反落があってもおかしくはないのでしょう。しかし、10月が始まってわずか数日で急反落となりますとやはり昨年のことを思い出してしまうところもあって、買い方からすれば心配な動きではあるのでしょう。


 景況指数などの結果からしまして、米FRBはこれで次回の利下げをせざるを得ない状況になったかもしれません。利下げで景気が支えられるから株価が上がる、あるいは、株式のリスクプレミアムが低下するので株価が上がる、というシナリオに戻るとしますと、日本株には円高というネガティブ要素が影響する、ということで日本株の買い方は歓迎とばかりは言っていられないかもしれません。


 来週には米中の閣僚級協議が行われます。再選に向けて米国景気の悪化を何としてでも避けたい、とトランプ氏が本当に考えているなら、今できることについてはとりあえず交渉を妥結して残りは交渉継続にする、というやり方になるかもしれません。(日米交渉はそうだったと言えるでしょう。)


 そうなれば、トランプ・プットで株価が支えられるという雰囲気になる可能性もありそうです。(加えて、英ブレグジットが曲がりなりにも合意なしの離脱にならなそうだ、となればポジティブ・サプライズになるでしょう。)買い方が期待するシナリオはこんなところでしょうか。


 一方、売り方は、米中協議の不調、合意なきブレグジット、米欧の貿易摩擦激化、などに賭けよう、とするかもしれません。株価の変動率が上がれば「自動的に」株を売る人たちがまだまだ大勢いることが確かなようですし。


売買タイミング

 よく、株は売り時が難しい、と言います。相場では何をするのも容易ではありません。売り時だけが特に難しいということはないように思いますが、うまく売ったかどうか?という見方をしたとき、売りについてはいろいろな感情を掻き立てることが非常に多い、ということなのでしょう。


 自分の想定とおりに株価が推移して、自分の計画とおりに売り買いができれば完璧、ということになるのでしょうが、株価の変動を完璧に予測することはふつうに考えればできませんので、相場を当てることで売買の出来を評価する、となりますとそうとう難しい話になります。


 相場の予測力を磨く努力はするとして、売買タイミングの良し悪しを相場の予測とは切り離して考えるようにする工夫が、相場対処で動揺を少なくすることに役立つのだろうという気がします。


 以下にそうした観点からの工夫をいくつか書いてみます。


1.投資においては、割安な株には投資価値がある、と信じるようにすること。そのように思えば買った後に評価損となってもいら立つことが少なくなるかもしれません。割安だから投資する、割高になったから売る、ということをした、と思えるようにすればいい、ということです。


2.トレーディングでは、リスク管理を徹底する。そうすることで成功するまで相場を張り続けることができて、どこかで大きな成果を得られるかもしれないからです。もちろん、さまざまな売買タイミングを計る工夫はする必要があります。(アルゴを利用する、という手もあります。)


3.特別な目的で株を買う、例えば株主優待を得るために買う、といった場合は、その「特別な目的」にあくまでも集中する。


4.20年、30年といったタイムスパンで資産形成のために、投信などの積立投資をする、という場合は、売買タイミングなど考えない。投資先が十分な水準の株主総利回りを達成できると信じて、積立投資を継続する。(企業の経営者が、株主の利益を本当に考え続けてくれれば、長期的に成果はあがるはずですから。)


2019年10月4日

証券アナリスト

松下律

せめぎあい

 今日の権利落ちで、2万2千円を割り込みそうな気もしますが、日経平均は、概ね2万2千円がらみの推移となっています。まさに、売り方・買い方ががっぷり四つ、と言いますか、ラグビーのスクラムのような状態なのでしょう。


 買い方はどこかで「上に抜けて欲しい」と期待しているわけですし、売り方は「どこかで崩れるに違いない」と思っているわけです。


 どちらに分があるか?4つの側面から見ますと、


1.景気、企業業績:これは売り方の想定の方が現実をよく見ている、というところでしょう。まだら模様ではあるものの、売り方に歩あり、という感じがします。


2.金融情勢:こちらは買い方の分があるようです。米国、欧州ともに、量的拡大を再開するかもしれない、という情勢になっていますので。「グレー・リノ(灰色のサイ)」がそこら中に居る情勢ですが、表面化しそうもないのです、今のところ・・米金利下げについては、ドル円相場で円高に作用しそうで痛しかゆしの面はありそうです。


3.政治情勢・地政学リスク:これは今は買い方に分がありそうです。トランプ氏がけっこう平和主義者だったことが分かってしまいましたし、言葉の威勢がいいのはともかくとして、湾岸情勢もとりあえず何とかなっていますし・・


4.需給:これが現時点からしばらくは、買い方に分がありそうです。最大の原因は、売り方が売り過ぎて「振り子が売りポジションの方向に振れ過ぎてしまった」ことです。


 日経平均関連のETFに逆日歩が付くものが続出といった具合で、個人の中にも売りポジ派がけっこういるようには見えます。


 向こう数週間で相場がどちらに傾くか、予断を許さない情勢ではありますが、「どちらに賭けるか?」という判断基準からすれば、日経平均がかれこれ2000円規模で上昇した後とはいえ、今も買いポジションに賭けたくなります。日経平均2万円そこそこの水準で、それこそ「エイヤ」で買いポジを作った向きは、すでに2000円方の上昇を確保しているわけですから、余裕がありそうですし。


 年末までの相場想定として、日経平均が昨年の高値をいったんはクリアするという方に賭ける人が増えて行くような気がします。実際そうなるかどうかは分からないのですが。


誰に向かって話をすべきか・・

 市場参加者は実に多様ですから、実際テレビで話していましても、自分はいったい誰に向かって話すべきなのだろう?と考えてしまうことがあります。


 私が「魔法使い」で、相場予想をドンピシャで当てる、上昇する銘柄、下落する銘柄をズバリ言い当てる、というのであれば、予言者として振る舞えばいい、ということになるのでしょうが、私の相場に対する基本観は、そもそも相場は当たるだの当てるだのと言うべきものではない、ということですから、そんな風にすることは考えられません。


 投資にせよ、投機にせよ、「リスクをとって、リターンを得ることを目指す」というものです。リスクをとるということは簡単に言えば「賭ける」ということです。


 ということは、おそらく私の立ち位置は、「賭ける価値があるかどうか?」について参考となるコメントを個人の投資者にお伝えすること、なのでしょう。


 個人投資者と言いましても、さまざまですが、私の感覚では次のようなふたつに大別するのがよさそうに思います。


1.20年~30年スパンで資産形成を目指して投資をしている比較的若い人たち。イデコや積立NISAの仕組みを使って、投信の積立投資を毎月している、という人たちが典型です。


2.収入を増やすために保有している資産の一部を投入して運用している比較的年齢の高い人たち。


 1.はおそららく日本に最大数千万人いる層の人たちです。2.はおそらく数百万人でしょう。


 年金生活をしていて、年金以外の収入を得るために資産の一部を投じて株式(及び関連商品)の売買をしている、というひとたちが、日本にどれくらいいるか?分からないのですが、公的年金の受給者がおよそ7千万人、年金生活をしている人の10%弱くらいが、株式運用をしている、というデータを見たことがありますから、やはり数百万人の規模なのでしょう。


 1.の人たちは、投資対象に資金を「信じて託す」ことが妥当かどうか、をいつも考えているでしょうし、2.の人たちは何とか相場を当てれられないか、と思っているでしょう。


 私は、今の日本企業の経営者たちの「基本方針」が変わらないとすれば、1.の人たちが、日本の株式関連の金融商品への投資によって利益をあげることを期待することは妥当なことだと思っています。


 2.の人たちに対しては、相場を当てることは容易ではないのですが、リスクを管理したうえで、賭ける価値を見出そうとする工夫は十分な見返りに結び付くでしょう、と言うことができるように思っています。


2019年9月27日

証券アナリスト

松下律




今回の連騰局面をどう捉えるか?

 さて、10連騰を含む今回の上昇局面をどう捉えるか?


この意味は、

1.この連騰をどう解釈するか?ということ

と、

2.この変動を利益につなげるためにどんな相場観が望ましかったか?


というふたつの側面から考えてみよう、ということです。


・10連騰前の状況=ファンダメンタルズはよくなかった。

 米中問題、欧州情勢、減益傾向、地政学リスク、ハード、ソフト両面でデータの中に悪いものが多くありました。

⇒ であるからこそ、8月中に「売り」が多く入って株価は下落気味した、とも言えるでしょう。


・しかしながら、売り方が売り崩せるほどには日本株のファンダメンタルズは悪くなかった。それなりに高いROE 、米欧の金融緩和への動き、一部半導体関連の復調(パソコン向けなど)。そして、何よりも、株価は昨年末にかけてすでに大幅に下落を経験したあとだったこと。

⇒ 売り方が期待するほどには相場は売り崩されなかった。


・振り子が逆に振れた。

⇒ パウエル・プット、トランプ・プットなども意識されたのかもしれません。売り方の買戻しが始まってしまった。


・重要なタイミングは、日経平均が500円規模で急落した8月26日だったと思いますが、当日の急落を見て、これはいよいよダメだ、と思った人は日経平均2万数100円の水準で買いを入れることができなかったでしょう。売ってしまうか、あるいは様子見ということで・・・

⇒ 最初に書きましたように、相場の環境は悪かったわけですから、買い向かうためには、おそらくは、「ダメかもしれないがここは買い向かおう」といった「飛躍した論理」を伴う意思決定が必要だったのではないか、と思います。


      あるいは、さまざまな悲観要素はあるものの、日本株は十分に割安だ、将来回復するはず、長期視点の投資家ならけっこう気楽に買うかもしれない、といった「希望」を強く持てる体質で、かつ「資金的に買う余裕があった」ということが重要だったかもしれません。


 それから、ここ数年「秋の連騰相場」が年中行事のようにあったことも買い方からすれば後押しの材料になったかもしれません。


 8月26日の急落を見て強気になった、という感覚の人はなかなかいなかったでしょう。弱気になるというのと、よく分からないがここは買い向かうぞ、と決める、のと、おそらく両者の判断の差は紙一重だったと思います。


 しかし、もしあの急落を見て「売りポジション」を取っていたら、今ずいぶん苦労しているでしょうし、「買い向かった」とすれば、今はそれなりの成果でしょう。


 ここから数週間、相場がどう推移するか?この上げ局面の規模がどれくらいになるか、想定の難しいところではありますが、売り方の買戻しはまだ続く可能性が強い、うまくすれば年内に昨年秋の高値に挑戦するような展開もあるかもしれない、そんな感じはします。数か月スパンの想定で取った「買いポジション」を売り上がることができそうだ、という意味です。


消費税率引き上げの悪影響

 いよいよ来10月1日から消費税率が2%引き上げられます。(軽減税率は8%で据え置き。)


 景気が思わしくない(特に個人消費が心もとない)時期にわざわざ消費税率を引き上げることはなかろうに、むしろ消費税率を5%に引き下げて、しばらくの間は、モダン・マネタリー理論に従って財政赤字拡大を容認し、量的緩和を復活して経済規模の拡大と潜在成長率の向上を目指せばいいのにと思いますが、消費税率の引き上げが目前に迫っているわけですから、もう何を言っても手遅れです。


 とはいえ、今回の消費税率引き上げの景気に対する悪影響の「度合い」について冷静に考えてみますと、過去3回の税率引き上げ(初回はゼロ→3%)時に比べれば「軽微」ではないかという気はします。


 「影響度」についてまとめますと以下の表のとおりです。


実施年月日    税率%    税率の増分%     増分の割合     影響度

1989年4月1日    3        3           ∞     バブルの最中で影響小。

1997年4月1日    5        2          67%    不況の最中で悪影響大。

2014年4月1日    8        3          60%    引き上げ幅大で駆け込み需要大。

2019年10月1日   10        2          25%    引き上げ対策+軽減税率=?




 すでにいろいろ言われて来たことではありますが、今回の消費税率引き上げに際してはさまざまな悪影響軽減のための措置が講じられています。税率引き上げ後には補正予算等による財政支出も行われるでしょう。


 個人消費の低迷の原因について、私は過去数年に亘って続けられて来た税以外の負担増(社会保険等)が個人の実質所得を減らしてしまったことの影響が大きかったと思っています。消費税率の引き上げでそうした負担増のペースが落ちれば、個人消費が多少なりとも増えるようになるのではないかとすら思います。


 何が起きるか、来月以降の実際のデータを見ないと分かりませんが、こと株式相場への影響という観点からしますと案外すんなりと今回の2%の消費増税をこなしてしまうのではないかという気もしています。 


2019年9月20日

証券アナリスト

松下律