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松下 律 の投稿

迷惑な関税男

松下 律

2019/12/06 08:20

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カムバック!アベノミクス

 昨日の株式相場で、鉄鋼株の上昇が目立ちました。すわ、景気拡大の先取り相場か?としますと、思うのはもちろん真水で10兆円以上の規模とされる大型経済対策です。


 それに加えて、新聞の報道によれば、日銀が量的拡大を再開するかも、とも伝えられています。


 アベノミクスの三本の矢という言葉も今では古語のようになっていますが、そういえば、三本の矢の第一は異次元の金融緩和、第二は大胆な財政支出の拡大、でした。(第三の矢は何でしたっけ?)


 10兆円を上回る財政支出の増加に日銀の量的再緩和政策が加わるとしますと、(整合性のある政策発動ということで)来年の日本経済を押し上げることになるかもしれない、と、確かに売り方は腰が引けるだろうな、と思います。


 買い方、売り方どちらが優勢になるか、分からない状態が2週間ほど続いていますが、来年の日本の景気はかなり上向く(本当にそうなるかどうかは分からなくても)となれば、しばらく保ち合いの後に相場は上抜けると想定する人が増えるのかもしれません。


リーディング材料

 現状で、相場に影響力を持つ材料は?と考えますと、おそらく、

1.米中摩擦に代表される貿易摩擦による悪影響

2.どこかで下向きそうな米景気という悪材料

3.株式需給


となろうかと思います。


 今週ですと、ISM製造業景況指数発表時の円高・株安に見られたように、米景気が悪化するかもしれない、という点に市場参加者は敏感になっています。と言うより、売り方が期待している、ということかもしれません。


 トランプ大統領は、中国だけでなく、欧州や中南米の国々にも貿易戦争を仕掛けていて、まさに関税男の面目躍如ですが、米国景気の先行き懸念という悪材料を、米中協議の進展(があるかもしれない)という囁きひとつでひっくり返して株価反発に持って行ってしまうのですから、威力は絶大です。


 米国の景気拡大のペースが落ちて行くとしますと、米中の部分合意くらいでは株価を支え切れない、という気もするのですが、当面は高需給を背景にトランプ氏の発言(等)に振らされる展開というのが米国株式市場(であり、その影響を強く受ける日本株市場)なのでしょう。


 日本株については、今年の夏くらいまでは、とにかく需給が悪い、という一言だったように思いますが、株式需給はかなり改善したのではないかと思われます。海外勢の売りが一巡した、ということが最大の要因でしょう。


 株式の需給が悪くならない、つまりは海外勢が大幅に売り越さない、ということであれば、最初に書きましたように、アベノミクス相場再びといった上昇相場が来年は見られるのかもしれない、と、おそらく、買い方は期待することになるだろうと思います。


円ドルと株式相場

 前回、外国為替相場についてお話しました。


・外国為替の水準は、二つの国の物価で決まるという考えが有力 ⇒ 従って、外国為替の妥当水準は徐々に変動する。


・インフレ率の高い(おそらく金利も高い)国の通貨は価値が減少して行く。(トルコリラの例をあげるまでもなく。)


・FX市場では、高金利通貨を買う、というキャリー・トレードがよく行われる。


・キャリー・トレードがしばらく続くと、インフレ率を反映する為替相場に戻るといった形で急速に相場が逆方向に動くことがある。これを、キャリー・トレード・クラッシュと呼ぶ。⇒ 大いに気を付けましょう。


 といったことを取り上げました。今回は、外国為替相場(特に円ドル相場)と日本株相場の関係について考えてみたいと思います。


 これが実に厄介でして、アベノミクス⇒日本株上昇、は明らかに円安下での株価上昇でしたし、件の関税男は、米ドルが高い⇒米輸出不振⇒米製造業沈滞⇒雇用減少⇒米経済に悪影響⇒米株価上昇の阻害要因、というロジックでいるようです。米ドルが強くなるのは嫌だ、と思っているわけではない、という気はしますが。


 考えるべきことは、「日本株の長期的な上昇に円安が不可欠なのか?」という点です。そうしますと、日本円が下落し続けない限り日本株は上昇しない、ということになってしまいます。


 実に厄介、というのはこの点でして、私個人は、そんなことはなく、円安と株価上昇が連動していたのは、異次元の金融緩和というアベノミクスの「初期」に顕著だっただけ、いわば特殊状況であって、一般化しない方がいい、と考えています。


 しかしながら、現時点で円安=日本株高、という図式を多くの市場参加者が受け入れていることは、否定できないだろうとも思います。


 どの辺りでこうした状況が変化して行くのか?興味を持って見ておく、というのが妥当な対応なのでしょう。


令和元年12月6日

証券アナリスト

松下律

米中と需給

 米7-9月期GDP数値の上方修正(+1.9%⇒+2.1%)を受けて、連日のDJIA最高値更新、これで日本株も上昇、と買い方は勇んだろうと思うのですが、朝方に、トランプ大統領による香港人権・民主主義法案への署名⇒円高・先物安、となって足元をすくわれてしまった、というのが昨日でした。


 とはいえ、売り方が勢いづくほどの下落となったわけではなく、多くの市場参加者はサイドラインで様子見、となっているようです。


 いずれにしましても、当面は「米中交渉の結果」と「株式需給」が市場参加者のもっとも大きな関心事なのでしょう。


 テクニカル指標面の過熱感も徐々に薄れて来ていますし、投資尺度から見た割安感の縮小はあるものの、年末に向けて一段高の推移を想定できないことはなかろう、といったところなのでしょう。


転機はいつか?

 とはいえ、このまま、ここから数か月以上「売り方惨敗」局面が続くとも思われません。


 米中交渉は、香港情勢がどうであろうと近々(これまで言われて来たとおり)部分合意するのでしょう。合意が済んでしまえば、相場の材料としての米中合意はとりあえずイベント通過、となるはずです。


 この3か月の上昇相場の「燃料」だった「売り方の買戻し」も、おそらくほぼ半数は終了したでしょう。また、海外勢の日本株買越額も細りつつあるようです。


 「グレー・リノ」としての世界の債務懸念、米景気の先行き、欧州情勢、米中の長期的な対立、各地の地政学リスク、等々、相場が「当面の天井圏」と意識されれば、「悪材料」と化す出来事には事欠かない情勢です。


 米国、日本ともにですが、株式相場のボラティリティの低下が見られます。ある程度ボラティリティ低下期間を経ると、またぞろ「リスク・パリティー」の売りを期待して投機筋が売り仕掛けする、と過去に何度も見て来た相場展開をまた見ることになるかもしれない、そんな風に考える市場参加者が増えても不思議ではないでしょう。


 8月下旬以降、日本株はよく上がってくれたものです。何しろ日経平均で3000円以上上がったのですから。当初はついて来られなかったマザーズ指数もようやく追いつき始めて来ています。


 長期の上昇相場を見越すとしても、その途中で健全な調整、という感覚もあるでしょう。そろそろ今回の上昇相場の短期スパンの転機について考えておくべき時期かもしれません。


外国為替相場

 昔は、外国為替の交換比率は「固定」制が中心でした。日本円と米ドルであれば、例えば、1ドルは360円で固定、といった具合で。


 それが40年ほど前から「変動」相場に移行した経緯があります。外国の通貨を買ったり、売ったりする場合、固定制の方が便利なようにも思えますが、変動相場制には、さまざまな「変化」を市場で形成される価格で調整するという機能がありますので、メリットが多い、というわけで今に至るまで変動相場制が続いています。


 例えば、日本円と米ドルを考えます。現時点における、日本円と米ドルの「正しい」価格があるとしますと、その価格を以って「固定価格」とすればいい、ということが言えます。(しかし、そうした「正しい」価格を見つけるのは容易ではないでしょうね。)


 加えて、そうしたとしますと、その「正しい」価格は、経済情勢等の変化によって「変動」して行くでしょうから、そのように決めた「固定相場」は必要に応じて「変動」させて行かないとまずいでしょう。(通貨の切り上げ、切り下げです。)


 となりますと、変動相場でいいのでは、ということになる、変動相場制採用の根拠のひとつはこうした事情である、と言っていいように私には思えます。(必要に応じて切り上げ、切り下げするより、市場での日々の変動で対応してもらう方がいい、ということです。)


通貨に正しい価格はあるのか?

 よく「購買力平価」とか、「金利平価」といったことが言われます。今日の放送では、米国でハンバーガーが1ドル、日本で100円の場合について、両国のインフレ率の差で両国通貨の価格が変動する、という説明をしようと思っています。


 いずれにしましても、購買力平価の考え方からしますと、「インフレ率の高い国の通貨はインフレ率の低い国の通貨に対して相対的に下落する」ということが言えます。


 購買力平価説が、唯一の正しい通貨の価格形成の理論、とはとても言えないと思いますが、けっこう説得力のある考え方のように私は思います。(購買力平価+資産選好=資産需要、で大方決まるのかもしれませんね。)


FX市場での(ポジティブ)キャリー・トレード

 金利差がありますと、より高い金利を求めて低金利通貨から高金利通貨に資金を移すという取引、キャリー・トレードと一般的に言われる取引、がよく行われます。


 円を保有する(または、円を借り入れた)投資家が、その円をドルに換えてドル金利を得る、といった取引です。FX取引を使いますと、レバレッジによってかなりの金額の収入、スワップ収入、を得ることができます。


 スワップ収入は、それぞれの国の名目金利の差です。例えば、今ですと、日米の名目金利差はおよそ2%弱なので、日本円を米ドルに換えますと、1万ドルについて1日50円くらいのスワップ収入が得られます。


 FX取引では、レバレッジが使えます。例えば、日本円100万円(米ドル換算およそ1万ドル)を証拠金にして20倍くらいレバレッジを掛けますと、米ドルで20万ドルくらいの買いポジションを持つことができます。これですと、1日のスワップ収入は1000円くらいになります。毎日のランチ代が出る、くらいの収入です。100万円投入すれば毎日ランチがタダになる、と言えるかもしれません。


 ただし、米ドルの買いポジションというリスクを取っていますので、1円ドル安・円高になりますと20万円損が出て、ランチ代どころではなくなります。

 

 逆に、1円円安になれば、20万円の儲けで、ランチは時々うなぎかステーキでもOK、となります。


キャリー・トレード・クラッシュ

 通貨の「本源的価値」は、長期的にはどうやら購買力平価を中心に測れるのではないか、と思われるのですが、短期的な変動要因は?と考えますと、いろいろな要因が言われるものです。国際収支、地政学的要因、季節要因、投機的要因、などなど。


 しかしながら、現時点では、どうやら「金利差」が一番市場参加者が重視する変動要因になっているようです。


 各国の中央銀行の金融政策に注目が集まるのは、政策の変更⇒金利の変動⇒金利差の変動⇒FX相場の変動、となるからでしょう。


 つまり、今のFX相場では、購買力平価などが示す外国為替の妥当値を意識しつつも、金利差に注目したキャリー・トレードが相場を動かしている、そこに地政学要因(今なら米中摩擦、要人発言)などがからんで来るようだ、といったところでしょうか。


 ここで注意しなければならないのは、(ポジティブ)キャリー・トレードは金利の高い国の通貨を買う(買いポジションにする)わけですが、そもそも購買力平価の考え方からしますと、金利の高い国はインフレ率も高いでしょうから、その通貨の価値はしだいに減価していくはず、という点です。


 キャリー・トレードでは、インフレ率が高くて将来価値が下がりそうな通貨を買って行ってしまう、ということです。トルコリラ、メキシコペソ、などの高金利通貨の買いを想定すれば理解しやすいでしょう。


 こうしたことが行われると起こりそうなこと、あるいはすでによく起きていること、は、キャリー・トレードがしばらく続いて上昇した高金利通貨が、どこかで突然下落する(クラッシュする)ことがある、ということです。


 こうした現象は、「キャリー・トレード・クラッシュ」と呼ばれています。振り返りますと、割と頻繁にFX市場で起きているように思います。(こうしたクラッシュを、投機筋やアルゴ取引の連中は狙っているはずですよね。)


 今回は、「購買力平価」と「キャリー・トレード・クラッシュ」のことを書いたのですが、次回はFXと株式相場の繋がり、これが実に厄介なものに私には思えるのですが、について書いてみるつもりでいます。


令和元年11月29日

証券アナリスト

松下律

鬩ぎ合い

松下 律

2019/11/22 08:20

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売り仕掛け

 あまり単純化し過ぎてもいけないのでしょうが、相場(例えば指数先物相場)の変動は買い方と売り方の鬩ぎ合い、つまりは投入される資金の量の勝負、と見ることができるでしょう。


 そういう目で見ますと昨日の日経平均株価の日中の動きは実に興味深いものでした。


 このところ上値が重くなって指数先物に売りを出して、節目の23000円を割り込んだところで一気に売りを仕掛けた。


 相場が急落して、これはトレンドの転換に成功したか?と思いきや、中国副首相の発言、日銀の買い(観測)で買いが優勢になって日経平均は23000円台回復という日中推移でした。


 売り方からすれば、今の情勢からすれば、買い方の利食い売りを誘って売り仕掛けに成功するかもしれないという思惑だったのでしょう。


 しかしそうは行かなかったようです。(少なくとも昨日は。)まだ売り方大勝利の機は熟していない、もう少し先、ということなのでしょう。


 とはいえ、相場が上がれば上がるほど、利食い売りできる量は増えて行くわけで、さて今回はどの辺りの株価水準で売り方が勝利するようになるか?と思いを巡らす局面に至ったのかもしれません。


 昨日の動きを見ていますと、日経平均と円ドル相場の相関が強い印象でした。まだまだアベ・トレード勢力が短期的には相場を動かす力を持っているようです。

 

好悪材料のピックアップ

 売りにせよ買いにせよ、なにかのきっかけで実行されるということが多いと思います。そこで当面の注目イベントについて考えてみたいと思います。


・裁定残高

 今回の上昇局面で、先物売りポジションの買い戻しが大きく寄与したと思われます。裁定売り残は8月末に向けて、1兆円規模から2兆円へと膨らみ、現時点で1兆円規模に減っているとのことです。


 一方で、裁定買い残はこの数ヶ月5千億円を下回る水準で大きくは動いていないそうです。


 これらからしますと、売り方の買い戻しはかなり進んだが、まだ1兆円規模で残っている。買い残はあまり増えておらず、海外投資家の積極的な現物買い→裁定買い残増加とはなっていないようです。


・空売り比率

 40%を超えると下げ圧力増加、40%を下回ると下げ圧力はさほどでない、というところかと思います。売り方からすれば、これが50%水準に上がればいいのに、ということでしょうが、そうはなかなかならないのでしょう。


 ただし、例えば今週の水、木と40%超えを記録したそうで、個別銘柄の売りで儲けてやろうとする向きが増え始めたようでもあります。


・外国人、日銀買い、個人売り

 測ったように海外勢買いの個人売りという図式が数週間継続しています。日銀は長いこと買わなかったのですが、今週の下落日に久しぶりに買ったと報じられています。


 外国人の継続的な売りが需給を悪化させるという局面ではなくなったようです。


・PER

 業績の下方修正で、日経平均の予想PERが14倍を超えて来ています。アベノミクス相場におけるPERの上限に近づいて来たことは確かです。


・米中協議

 ニュースに一喜一憂といった感があります。遅くとも年内に部分合意成立というのがメインシナリオだと思いますが、不透明要因が大き過ぎてなかなか判断できないところです。


・香港情勢

 こちらは悪化の一途です。しかし香港情勢がどの程度日本株に影響力を持つと考えるべきか?分からないとしか言いようがないと思います。売り方からすれば、香港情勢の悪化が日本株には大悪材料という雰囲気になってほしいでしょうが、論理的にはそれほど大きな影響は与えないと思うべきなのでしょう。


・日韓摩擦

 日韓の関係悪化も売り方からすれば期待の悪材料だったでしょうが、あまり取り沙汰されることもなく、今晩消えそうな雰囲気です。


 これら以外にも以下のようにいろいろ考えるべき材料があるように思います。


・VI(ボラティリティ)⇒ リスクパリティー運用の売りがどっと出れば相場は下がります。


・テクニカル指標 ⇒ 足許過熱を示す指標が多いことは確かでしょう。


・グローバル景気 ⇒ 米以外は思わしくなく、その米国も来年リセッション入りの恐れがなくもありません。


・企業業績 ⇒ 日本についてみれば、かなりの減益になる、というのがコンセンサスでしょう。


・中銀の金融政策 ⇒ 日米欧ともに今はほとんどの市場参加者が関心を持っていない状況でしょう。つまり、金融政策を見て投機的に行動する市場参加者は少ないだろう、ということで。


・銘柄物色傾向 ⇒ このところ中小型株の一部、材料株の一部に動意が見られるようです。個人資金が動き始めたのかもしれません。


・ヒンデンブルグオーメン ⇒ 11月14日に点灯、とのコメントがありました。しかし、よく分からない指標ではあります。


令和元年11月22日

証券アナリスト

松下律

リスクパリティーの売りにまで持って行けるか?

 先週の11月SQまでの3ヶ月ほどは相場はほぼ買い方の完勝でしたが、今週に入ってからはそうでもない、という推移が続いています。ただ、日経平均で見て下落幅はせいぜい500円規模で、大きくはありません。(今のところ。)


 来月12月のSQまでに日経平均が2万4千円を超える上昇があれば、12月SQまでの相場も引き続き買い方の勝ち、逆に2万2千円を下回るようなことがあれば、ほぼ4ヶ月ぶりに売り方の勝ち、といったところでしょうか。


 買い方勝利が続いている間、グローバル景気、日本の企業業績、といったファンダメンタルズはけして良かったわけではありません。材料面から見ましても、米中の対立、欧州情勢、中東の地政学リスク、等々、相場へのマイナス要因多数、という状況でした。


 それでも相場上昇が達成できたのは、売り方の買い戻しのおかげ、半導体分野の復調のおかげ、といったところだったように思います。


 売り方からすれば、「相場がまちがっている」感を強く持ちながら評価損に耐え忍ばざるを得なかった、という展開だったように思います。


 振り返りますと、昨年の10月上旬からの暴落相場では、買い方が「相場がまちがっている」感を持つ中で、売り方が大勝利だったように思います。


 相場の見通しは難しいのですが、ここから年末くらいまでの期間、どんなシナリオに「賭けるか」という意思決定は市場参加者それぞれができることです。さて、どんなシナリオに賭けるか?


 年末に向けての一段高シナリオを想定して、「ここからいよいよ新規の買いポジションを作る」というのは勇気の要ることだろうと思います。


 現実的な「賭けるシナリオ」という意味からすれば、以下のようなものだろうと思います。


1. さいわいにして8月中下旬以降の安いところ、日経平均で見て2万1千円より下の水準で作った買いポジション(指数先物、ETF、ハイテク系の個別株など)があるなら、利食いはするものの、ある程度の買いポジションを年末までの上昇に賭けて残す。


2. 今回の上昇相場を見過ごしたのであれば、新規の買いは見送る。


3. 個別銘柄を見ますと、まだ上昇していないものも多くありますから、そうした銘柄の買いポジションを作る。(ただし、出遅れを狙うという戦術は、三番手くらい以降になると往々にしてうまく行かないことが多いものです。)


4. 先週の「幻のSQ値=日経平均2万3600円台)」を当面の高値と踏んで、年末に向けて相場下落に賭ける。(売り方勝利のシナリオに賭ける。)


 売り方勝利のシナリオに賭けるとしますと、悪材料が頼もしい味方ということになるわけですが、さて今の段階で何か頼りになる悪材料はないか、と見渡しますと、けっこう数は多いかもしれません。


1.米中交渉の不調

2.香港情勢悪化

3.日韓の対立

4.欧州情勢の悪化

5.中東の地政学リスク(テロなど)

6.米金利の上昇

7.米大統領弾劾

など。


 数は多いものの、どれも今ひとつ破壊力に欠けるような・・。売りポジションで儲けよう、というのであれば「望むらくは」日経平均で2千円以上の幅の下落(そういう相場であれば、個別銘柄なら株価半値に下落、といったこともあるでしょう。)といったところかと思いますが、これらの悪材料の破壊力ではちょっと・・という感じでしょうか。


 昨年の10月から年末にかけての暴落商状の再来を望むのはなかなか難しいのでは、と思います。当時は買い方・売り方の振り子がかなり買いの方に振れていましたので。


 となりますと、売り方として期待するのは、上記の6.に関連して、また、2018年の1、2月に起きた「リスクパリティーの売りの再来」といったところかもしれません。


 いつも書いていることですが、20年、30年のスパンで資産形成のために毎月積立で株式投信を買っている、といった投資家からすれば、年末に向けて相場が上伸しようが反落しようが、気にする必要はないと思いますが、数週間から数ヶ月スパンの相場変動から利益を汲み上げようとする向きは、来週以降、年末までの相場変動に大いに注目している、ということかと思います。


議決権の行使

 機関投資家は株主総会において、スチュワードシップ・コードに従って議決権を行使する、というのが今はふつうになっています。


 一方、個人投資家は形式的に議決権を行使するか、行使(のために総会に出席すること)をしないことも多い、というのが現状です。トレーディングの「途中で」たまたま株主名簿に名前が載った、といった株主は議決権行使に興味など持たないのは当然です。


 総会への出席者が少なくなり過ぎると定足数が心配になる、などということも起きますが、かと言って定足数を満たすために個人株主に議決権の行使を求める、と言えることでもないように思います。


兜町ルール

 会社の経営に不満なら、株主総会での決議を通じてその意思を伝えるより、さっさと手持ちの株を売ってしまえばいい、というのが伝統的な株式市場のルールでもあります。


 市場で株が売られて株価が下がれば、経営者は株主からの圧力を受けて経営を改めるだろう、というわけで、別に株主総会で議決権を行使しなくても、経営者へのメッセージにはなるのです。


 株主総会では多くの議案が決議されますが、もっとも重要な議案はおそらく「取締役の選任議案」であろうと思います。


ROESG

 株主は経営者に「きちんとした経営をして」、「株主に利益をもたらす」ことを期待しています。


・きちんとした経営=ESG

・株主の利益=ROE


というわけで、このふたつを一緒にしてROESGなどと言ったりします。(注)


 ROESGに不熱心な経営者は、株主総会における取締役選任議案で賛成票を集められず、票数によっては選任されない、などということが起きる、というプロセスを通じて、経営に規律を与える、となっているのです。


しかし現実には

 ほとんどの会社で、会社提案の議案における取締役選任の賛成票の比率は90%以上です。


 つまり、たいていの経営者(取締役)は株主総会において選任されないなどということはない、ということです。(ごく稀に選任されないことがありますが。)


 としますと、株主総会における取締役の選任議案に賛成しようが反対しようが、それが経営者への圧力などにならないのではないか、という考えが思い浮かびます。


 この点については、数多くの研究があるそうですが、私が直近に読んだある論文によりますと、たいていの取締役は90%以上の賛成票を集めて選任されるとはいえ、株主の投票行動によって、上記のROESGに影響を及ぼすことがあると見られる、とのことでした。


 つまり、選任の賛成票が少ないと、経営者が賛成票を得ようとしてROESG向上に努力する傾向がある、らしいのです。


 個人株主は、スチュワードシップ・コードのある機関投資家のように、株主総会において議決権を行使することが重要だ、ということはないと私は思いますが、例え自動的に選任されているかに見える取締役であっても、賛成票の微妙な差によって行動が変わることがある、ということからしますと、もっと多くの個人株主が議決権行使に興味を持ってもいいのかもしれない、と思います。


(注)

 私は個人的には、ROESGのうち、経営者の「目標」はあくまでROEであり、ESGは、ROE向上を目指す際に留意すべき「制約条件」のようなものであって、経営者の目標がESGであるという考え方には違和感を持っています。


2019年11月15日

証券アナリスト

松下律

佳境入り?

松下 律

2019/11/08 08:20

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この2か月強の変動

 そろそろ日本株相場は佳境入り、もちろん「買い方」から見ての話しです。日本株と言えば、PBRは1倍がいいところ、PERは12倍が精いっぱい、と言われていたのがわずか3か月弱前、需給が悪いとそんなことになってしまう、ということだったのですが、この2か月あまりまさに様変わりの相場だったということができると思います。


 しかし、そろそろ佳境入り?売りポジションをそのままにして来た売り方(どれくらいいるのか分かりませんが)は、この間の日経平均3千円の上昇は相当に痛手だったでしょう。


 この2か月強の間の指数の変動はこんなでした。


・日経平均: 2万100円台 → 2万3500円台(昨夜の時間外の日経平均指数先物) 約3500円幅の上昇、上昇率およそ15%


・DJIA: 2万5300ドル台 → 2万7500ドル台 約2000ドルの上昇、上昇率およそ8%


・円ドル相場: 106円台 → 108円台 約2円の円安


 日本株(日経平均)の上昇はNYダウより大きく、大きな円安がない中での上昇、というところにこれまでと違う相場の雰囲気を感じます。


何が起きたのか?

 売り方の買戻しと半導体関連株の上昇、このふたつに本当に感謝、と(おそらく)「買い方」は言うのではないか、と思います。


 ファンダメンタルズの悪さから、思い切り売りポジションを作ってくれた「売り方」に「買い方」は感謝、同時に先行き不透明の中で巨額の設備投資を始めてくれた台湾のTSMCに感謝、それから、中国のスマホメーカーの部品積極手当に感謝、というところではないでしょうか。


 「買い方」としては、含み益を背景にツメを伸ばすというところでしょうが、いろいろな意味で上昇相場は佳境入りといった感覚ではないかと思います。


今後をどう読むか?

 ファンダメンタルズ・データと整合的な日経平均の現時点の妥当値は、おおむね2万3000円、この値を中心に「レンジ」としてはプラスマイナス1500円くらい、というあるエコノミストの意見を昨日目にしました。


 日経平均の水準は、今のファンダメンタルズからしておおむねいい所まで来たが、この先1500円くらいの上値(2万4500円水準)はあるかもしれない、ということで、個人的な感覚と合うコメントでしたので印象に残りました。


 いずれにしましても、「買い方」とすれば、ここから「新規の日経平均買い」はないだろうな、というところでしょう。


 この上昇局面がどの程度の期間続き、その程度の水準まで上昇するか、そう簡単に決め打ちはできないと思いますが、今後も変動が大きい相場になるだろう、ということはほぼ確実に言えそうな気がしています。


静かに進む変化

 世の中の出来事には「繰り返す感じ」のものも多いのですが、以前とはずいぶん違うということも多いものです。いくつか挙げてみますと、


1.金利の水準

2.さまざまな格差の拡大とか分断現象

3.株式市場の様相


 こうした「変化」を見て、いずれまた「昔のように」戻る、という前提で現状を見ることもできますし、パラダイムシフトのようなことが起きたのだから、もう昔のようには戻らない、と考えることもできます。


 例えば、米国の長期金利が2%にも満たず、日欧の長期金利は軒並みマイナス、というのを見て、これは何かおかしなことが起きているのであり、将来何かが正常化すれば解消する、と思うのか?これらは「変化」の証でいわば「ニューノーマル」なのだ、と考えるのではずいぶん違ってきます。


 株式市場の様相でも、「株式市場の役割は、資金余剰部門である個人から資金不足部門である企業に資金を回すことだ」といった考えからしますと、企業が調達する資金額以上の額の自社株買いをする、などは間違った現象、と思えたりするでしょう。


 あるいは、株式市場における「買い方」と「売り方」の非対称なところがどんどん小さくなって行く、などということも場合によっては非難の対象になるかもしれません。


投資・投機の観点からすると・・

 見方、考え方はさまざまですが、株式への投資、相場変動から利益を汲み取ろうとする投機、の観点からしますと、世の中で静かに進む「変化」については、割と素直に受け入れる方が相場対処においては有益という気がします。


 例えば、自社株買いについて見れば、資金余剰の企業が多く存在するようになった、ということなのでしょう。そうでなくて伝統的な企業行動をする(つまり市場から資金を調達する)企業も依然多く存在するわけですし、巨額の自社株買いを「市場機能の低下」などと見る必要はないように思います。


 それよりも、借り入れまでして自社株買いをする企業が多いとすれば、それは将来大きな変動をもたらす一種のひずみを生み出しているのかもしれないわけですから、どこかで「売りポジションを取る」チャンスを作ってくれるかもしれない、とまあ、そんな風に見る方がいいのではないか、と思ったりするわけです。


令和元年11月8日

証券アナリスト

松下律